日本がん看護学会誌
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原著
HCV由来肝硬変・肝がん患者が語る病みの経験
内田 真紀稲垣 美智子
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2005 年 19 巻 2 号 p. 39-47

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抄録

要 旨

本研究の目的は,HCV由来肝硬変・肝がん患者の病みの経験を明らかにすることである.研究方法は病名告知されたHCV由来肝硬変・肝がん患者を参加者に半構成的面接を行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した.研究参加者は12名であった.

HCV由来肝硬変・肝がん患者の病みの経験とは,最初に死を意識したときから始まり,患者の生の確かさは再発の告知や治療の成功の体験のたびに[進行してしまう病気を認めるしかないという思い]を中心に[治療によって繰り返し継ぎ足されていく命]と[死は仕方のないこととあきらめようと思う]の間を終末期になっても振り子のように揺れ動いた行路を中核として語られた.

患者は最初に死を意識したとき,それ以前の自分の経験を振り返り,[病気があっても,自分なりに生きることができた]と意味づけることで,最初に死を意識したとき以後の生の確かさを求める思いを抑えていた.

[病気があっても,自分なりに生きることができた]は人生の統合を意味し,患者は死を受け入れようとしながらも終末期でも死の受容に至らないと考えられた.これは,最初に死を意識した以後は命を継ぎ足すことそのものが病みの経験の意味となっているためと考えられた.

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2005 一般社団法人 日本がん看護学会
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