日本がん看護学会誌
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19 巻, 2 号
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原著
  • 内田 真紀, 稲垣 美智子
    2005 年 19 巻 2 号 p. 39-47
    発行日: 2005年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,HCV由来肝硬変・肝がん患者の病みの経験を明らかにすることである.研究方法は病名告知されたHCV由来肝硬変・肝がん患者を参加者に半構成的面接を行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した.研究参加者は12名であった.

    HCV由来肝硬変・肝がん患者の病みの経験とは,最初に死を意識したときから始まり,患者の生の確かさは再発の告知や治療の成功の体験のたびに[進行してしまう病気を認めるしかないという思い]を中心に[治療によって繰り返し継ぎ足されていく命]と[死は仕方のないこととあきらめようと思う]の間を終末期になっても振り子のように揺れ動いた行路を中核として語られた.

    患者は最初に死を意識したとき,それ以前の自分の経験を振り返り,[病気があっても,自分なりに生きることができた]と意味づけることで,最初に死を意識したとき以後の生の確かさを求める思いを抑えていた.

    [病気があっても,自分なりに生きることができた]は人生の統合を意味し,患者は死を受け入れようとしながらも終末期でも死の受容に至らないと考えられた.これは,最初に死を意識した以後は命を継ぎ足すことそのものが病みの経験の意味となっているためと考えられた.

  • 鈴木 久美
    2005 年 19 巻 2 号 p. 48-58
    発行日: 2005年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,告知を受けた乳がん患者が危機を乗り越え,がんとその治療に前向きに取り組み,自らQOLを高めて生の充実を図るための心理教育的看護介入プログラムを作成し,その効果を明らかにすることである.

    プログラムは予備調査の結果と文献的考察を基に考案した.プログラムの内容は,病気や治療の適切な認知を促すこと,身体的,情緒的安定を促すこと,学習ニーズを充足することを構成要素とし,認知的,情緒的,教育的支援を用いて告知後1週間から退院後1カ月の期間に4回の個別介入をすることとした.

    プログラムの効果は,65歳以下の初発乳がんで手術に臨む女性患者で研究の同意が得られた者を対象に,プログラムを適用した群(適用群)20人と,通常のケアを受けている群(非適用群)20人で比較検討した.両群ともに作成した身体症状質問票,日本版POMS,日本版MAC,QOL評価質問票を用いて介入前後で3回測定した.分析は,反復測定二元配置分散分析を用いた.

    その結果,身体状態や情緒状態,がんへの取り組み,QOLにおいて両群間で有意差はみられなかった.しかし,病期別Ⅱ~Ⅳ期グループの両群の比較では,抑うつ・落込み(p=0.022),前向きな態度(p=0.030)と絶望的な態度(p=0.077)において交互作用がみられ,適用群は非適用群に比べて介入前よりも介入直後および介入後1カ月で有意な改善または改善傾向が示された.よって,本プログラムは,Ⅱ期以上の乳がん患者の情緒状態,がんへの取り組みを有意に改善し効果があることが示唆された.

  • ―Margaret Newmanの理論に基づいた実践的看護研究―
    高木 真理, 遠藤 惠美子
    2005 年 19 巻 2 号 p. 59-67
    発行日: 2005年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,Margaret Newmanの「拡張する意識としての健康の理論」を理論的枠組みとして,老年期がん患者と看護師がパートナーとなり,ケアリングパートナーシップという看護ケアを実施し,患者ががん体験の苦しみの中で自分の人生と自分自身の意味をどのように見いだしていくのかを探究することであった.実践と研究を結びつけ,過程に注目する質的,縦断的研究デザインをとった.研究参加者は,告知や治療など,がんによる苦しみの真っただ中にいる65~80歳の間の患者6名であった.参加者は研究者と3回以上の面談をもち,人生の中での意味ある人間関係や事柄を語り,対話を繰り返した.データはこの参加者の語りと対話の内容,ならびに研究者のジャーナルであった.

    ケアリングパートナーシップの過程には,“常に他者を優先し”,“自分の気持ちを表現せず”,“信念を貫いて生きる”という,参加者らのこれまでの生き方のパターンが表れた.そして,参加者らがこの生き方にとらわれ,それを継続しようと必死でもがいている自分自身に気づいたとき,自分の気持ちに関心を向け,がんを得た現実の中で新たな生き方を見いだし,人生を受け入れて喜ぶという変化が表れた.この変化は,形は違っても死を通して変容を遂げた参加者に相通ずるものであった.

    参加者の人生パターンには,彼らが生きてきた時代が鮮明に映し出され,そのパターンに固執し苦しんでいる自分のパターンを認識し,洞察を得ることによって,参加者らは新たな価値観や信念を創出したといえる.このことは,Newman理論に基づくケアリングパートナーシップという看護ケアは,老年期の患者が,がんを得てもなお人として成長を続けることを助けるということを示唆するものである.よって,本看護ケアは,老いの進行とともにがんの診断によって自尊心の低下などを招きやすい老年期がん患者への看護として意義があるといえる.

研究報告
資料
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