日本がん看護学会誌
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原著
診断・治療期にある乳がん患者の生の充実を図る心理教育的看護介入プログラムの効果
鈴木 久美
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2005 年 19 巻 2 号 p. 48-58

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抄録

要 旨

本研究の目的は,告知を受けた乳がん患者が危機を乗り越え,がんとその治療に前向きに取り組み,自らQOLを高めて生の充実を図るための心理教育的看護介入プログラムを作成し,その効果を明らかにすることである.

プログラムは予備調査の結果と文献的考察を基に考案した.プログラムの内容は,病気や治療の適切な認知を促すこと,身体的,情緒的安定を促すこと,学習ニーズを充足することを構成要素とし,認知的,情緒的,教育的支援を用いて告知後1週間から退院後1カ月の期間に4回の個別介入をすることとした.

プログラムの効果は,65歳以下の初発乳がんで手術に臨む女性患者で研究の同意が得られた者を対象に,プログラムを適用した群(適用群)20人と,通常のケアを受けている群(非適用群)20人で比較検討した.両群ともに作成した身体症状質問票,日本版POMS,日本版MAC,QOL評価質問票を用いて介入前後で3回測定した.分析は,反復測定二元配置分散分析を用いた.

その結果,身体状態や情緒状態,がんへの取り組み,QOLにおいて両群間で有意差はみられなかった.しかし,病期別Ⅱ~Ⅳ期グループの両群の比較では,抑うつ・落込み(p=0.022),前向きな態度(p=0.030)と絶望的な態度(p=0.077)において交互作用がみられ,適用群は非適用群に比べて介入前よりも介入直後および介入後1カ月で有意な改善または改善傾向が示された.よって,本プログラムは,Ⅱ期以上の乳がん患者の情緒状態,がんへの取り組みを有意に改善し効果があることが示唆された.

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2005 一般社団法人 日本がん看護学会
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