日本がん看護学会誌
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原著
老年期がん患者と看護師とのケアリングパートナーシップの過程
―Margaret Newmanの理論に基づいた実践的看護研究―
高木 真理遠藤 惠美子
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2005 年 19 巻 2 号 p. 59-67

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抄録

要 旨

本研究の目的は,Margaret Newmanの「拡張する意識としての健康の理論」を理論的枠組みとして,老年期がん患者と看護師がパートナーとなり,ケアリングパートナーシップという看護ケアを実施し,患者ががん体験の苦しみの中で自分の人生と自分自身の意味をどのように見いだしていくのかを探究することであった.実践と研究を結びつけ,過程に注目する質的,縦断的研究デザインをとった.研究参加者は,告知や治療など,がんによる苦しみの真っただ中にいる65~80歳の間の患者6名であった.参加者は研究者と3回以上の面談をもち,人生の中での意味ある人間関係や事柄を語り,対話を繰り返した.データはこの参加者の語りと対話の内容,ならびに研究者のジャーナルであった.

ケアリングパートナーシップの過程には,“常に他者を優先し”,“自分の気持ちを表現せず”,“信念を貫いて生きる”という,参加者らのこれまでの生き方のパターンが表れた.そして,参加者らがこの生き方にとらわれ,それを継続しようと必死でもがいている自分自身に気づいたとき,自分の気持ちに関心を向け,がんを得た現実の中で新たな生き方を見いだし,人生を受け入れて喜ぶという変化が表れた.この変化は,形は違っても死を通して変容を遂げた参加者に相通ずるものであった.

参加者の人生パターンには,彼らが生きてきた時代が鮮明に映し出され,そのパターンに固執し苦しんでいる自分のパターンを認識し,洞察を得ることによって,参加者らは新たな価値観や信念を創出したといえる.このことは,Newman理論に基づくケアリングパートナーシップという看護ケアは,老年期の患者が,がんを得てもなお人として成長を続けることを助けるということを示唆するものである.よって,本看護ケアは,老いの進行とともにがんの診断によって自尊心の低下などを招きやすい老年期がん患者への看護として意義があるといえる.

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2005 一般社団法人 日本がん看護学会
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