日本がん看護学会誌
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研究報告
多発性骨髄腫患者に対するボルテゾミブ治療における末梢神経障害マネジメント
―神経障害質問票を活用して―
津留崎 寛子三浦 比呂子
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2011 年 25 巻 3 号 p. 21-29

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抄録

要 旨

本研究の目的は,多発性骨髄腫のボルテゾミブ治療において,患者自身の主観的な末梢神経障害質問票であるFACT/GOG-NtxV4.0(FACT)をクリティカルパスに取り入れ,チーム医療体制で運用することで,ボルテゾミブ治療による末梢神経障害のマネジメントに有用かどうかを検討することである.当院集学治療センター(血液・腫瘍内科)では末梢神経障害をマネジメントする取り組みとして,ボルテゾミブ治療のクリティカルパスに,末梢神経障害特異的患者申告質問票としてFACTを導入し,医師・看護師(入院・外来)・薬剤師と共にチーム医療体制による運用を行い,末梢神経障害の早期発見に努め,投与量調整等の治療への反映を試みてきた.今回クリティカルパスで管理された患者の診療記録を対象として後方視的調査を実施し,患者自身によるFACTへのスコア記入の程度,ボルテゾミブ治療開始後早期のFACTスコア変動,末梢神経に関連した患者主訴およびボルテゾミブ治療の状況として投与量および治療サイクル数を探索的に分析することで本取り組みが末梢神経障害のマネジメントに有用であったかを検討した.

結果として患者自身によるFACTへのスコア記入率は高く,末梢神経障害発現例のFACTの総合スコア平均値は治療開始後1・2サイクルで有意(p=0.0004)に低下を示した.このスコア変化は患者の訴える末梢神経に関連した違和感との連動が推測されたことから,本取り組みが末梢神経障害の初期症状をより確実に捉えることで末梢神経障害のマネジメントに有用である可能性を示すものであった.またさらにボルテゾミブ治療の平均サイクルも8.7サイクルと既報告と比べても良好であり,患者の治療継続に深く寄与するものと考えられた.

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2011 一般社団法人 日本がん看護学会
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