2016 年 30 巻 2 号 p. 90-98
要 旨
目的:前立腺がんにはさまざまな治療方法があることで,治療の選択時に悩みや葛藤
が生じることが予測される.また,他のがんに比べて長期生存が望めることから,治療後の尿失禁に悩まされることなく暮らしたいなど,自分に合った治療を選択したいと願う患者は少なくない.本研究の目的は,重粒子線治療を選択した患者の意思決定プロセスを明らかにし,看護支援を検討することである.
方法:対象者は,前立腺がんに対して重粒子線治療を受け,治療終了後1 年以内の患
者14 名である.データ収集は半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M―GTA)を用いて質的帰納的に分析した.
結果:本プロセスは,対象者ががん告知による衝撃を受けながらも病気を受け止め,
前立腺がん治療に関する情報を獲得していた.その後,自己のゆずれない考えのもと,治療の価値を見出し気持ちが傾き,重粒子線治療が最適な治療だと確信し,治療の決定へと至っていた.
考察:プロセスの特徴は,重粒子線治療と一度決めたら揺らがない意思決定であり,
自己の価値観と照らし合わせ,治療後の生活を見据えた意思決定であった.看護支援としては,獲得した情報から自己の価値観に基づいた意思決定が行えているか見極め,治療後の身体的な側面だけでなく仕事や趣味など社会的な側面など,生活全体を捉えた選択ができるよう患者の気持ちに寄り添い支えていくことが重要である.