日本がん看護学会誌
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30 巻, 2 号
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30周年記念企画
原著
  • 浅海 くるみ, 村上 好恵
    2016 年 30 巻 2 号 p. 45-52
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/16
    [早期公開] 公開日: 2016/06/29
    ジャーナル フリー

    要 旨

    目的:本研究の目的は,ピアカウンセラーの体験や考えによる語りから,ピアカウン

    セラーと医療者の有機的な連携を促進するために必要な要素を明らかにし,有機的連携を促進するための具体的な方略を検討することである.

    方法:がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターでピアカウンセリングを担当す

    る,NPO 法人がん患者団体支援機構に属する6 名のピアカウンセラーを対象に,半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.

    結果:ピアカウンセラーと医療者の有機的連携の促進は,【相談場所と相談システム

    の改良】【医療チームにおけるメンバーシップの形成】【ピアカウンセリングマインドとスキルの洗練】が必要であることが明らかとなった.

    考察:カテゴリの関連性を検討すると,ピアカウンセラーが医療チームにおけるメン

    バーシップを形成することは,すなわちピアカウンセリングマインドとスキルの洗練へと繋がり,医療チーム内で存在感を増すことになるなど,それらは影響し合う関係であり,ピアカウンセラーと医療者の有機的連携の促進に向けた方略の核であると考えた.そして,相談場所や相談システムの改良というハード面の強化は,有機的連携の促進を支える土台であることが推察された.

    結論:有機的連携の促進に向けた具体的方略は,ピアカウンセラーが活動しやすい土

    壌を整備すること,がん体験者であるピアカウンセラーのアンビバレントな側面を理解すること,ピアカウンセラーの内発的動機づけの維持・向上を目指すことが有効である.

  • 西脇 可織, 片岡 純
    2016 年 30 巻 2 号 p. 53-62
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/16
    [早期公開] 公開日: 2016/07/06
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,ホスピス・緩和ケア病棟(以下,緩和ケア病棟)に勤務する看護師が,認知症とがんを併せもつ患者の看護において抱く困難と対処過程を明らかにすることである.

    緩和ケア病棟において,認知症とがんを併せもつ患者の看護経験がある看護師12 名を対象に半構造化面接を行い,エスノグラフィーの手法を用いて分析した.

    その結果,看護師は,認知症とがんを併せもつ患者の看護について〈今までのやり方が通じずやっかいに感じる〉困難をもち,〈培った経験を活かしつつやれるケアを試行錯誤する〉ことで対処していた.この対処を支える気構えは〈苦痛を緩和して穏やかさを得ることに徹するしかない〉であった.対処の結果,看護師は〈諦めなければ認知症の特徴を捉えた緩和ケアの実践ができる〉感覚を得ていた.一方で〈尽力してもケアや薬剤の効果の実感が得られない〉と感じる看護師も存在し,〈最期は看護の重点を家族に移す〉対処をとった.いずれも最期は,〈家族と信頼関係を築き家族の満足いく看取りとなる〉という困難と対処過程が明らかとなった.

    認知症とがんを併せもつ患者の看護において看護師の困難を減じるためには,ケアの成果の実感がもてるよう認知症のBPSD とせん妄について学ぶことや,院内外の他職種と協働できる体制整備の重要性が示唆された.

  • 藤本 桂子, 神田 清子, 京田 亜由美, 本多 昌子, 菊地 沙織, 今井 洋子
    2016 年 30 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/16
    [早期公開] 公開日: 2016/08/26
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的はしびれによる精神的ストレス内容と対処を明らかにし,効果的な支援方法を検討することである.Oxaliplatin 総投与回数10 回以上,総投与量850 mg/m2 以上で,研究に同意した16 名を対象とした.インタビューガイドを用いた半構造的面接調査を行い,質的帰納的分析を行った.しびれによる精神的ストレスの内容3 カテゴリーは【自分ではどうにもできないしびれに対し不安や無力感を抱く】【行動の制限を強いるしびれに恐怖やつらさを感じる】【しびれにより他者との距離を感じる】にまとめられた.また,精神的ストレスへの対処は【しびれについての認知を変えることでしびれを納得し受け止める】,【しびれに対する対処行動を模索することで自分なりの解決策を得る】の2 カテゴリーであった.看護師はしびれによる精神的ストレス内容とその対処についてアセスメントし,しびれの影響で不安やうつに進展していないか治療継続性を客観的に判断する必要性が示唆された.

  • 田村 紀子, 小松 浩子
    2016 年 30 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/16
    [早期公開] 公開日: 2016/09/09
    ジャーナル フリー

    要 旨

    手足症候群(以下,HFS)のマネジメントには,患者の日常生活におけるさまざまな要因が関連していると考えられるが,HFS に関する患者の生活やセルフマネジメントの実態はあまり分かっていない.本研究は,外来でカペシタビン治療を受ける再発・進行乳がん患者が,どのようにHFS マネジメントを行っているかを明らかにするため,21 名の患者に半構造的面接法による調査を行った.データは逐語録に起こし,質的データ分析法に基づいて分析した.その結果,研究参加者の行うHFS マネジメントは,『治療継続と自分らしい生活の両立』という現象であることが分かった.

    これは,【HFS が治療や生活に及ぼす影響の認識】【手足の皮膚の変化に対する関心】【手足の皮膚をいたわる努力】【努力を続けていける見込み】【現状と治療目標のすり合わせ】の5 カテゴリーから成り,これらが循環していくプロセスとして構造化された.【現状と治療目標のすり合わせ】は,療養生活における優先順位を再考し,治療目標の修正や治療に関する体験の意味づけを行うもので,HFS の症状や,予防策を行うことによる生活への影響を考慮しながら,おのおのの治療目標を吟味して,治療の継続と自分らしい生活の維持の両方を目指そうとしていた.

    医療従事者は,カペシタビン治療を受ける患者に対して,一般的な知識の提供に留まらず,治療における意思決定支援を含めた,療養生活全体についてアセスメントし,個別的なサポートを継続していくことで,患者のHFS マネジメントを強化できると考えられる.

  • 矢ヶ崎 香
    2016 年 30 巻 2 号 p. 81-89
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/16
    [早期公開] 公開日: 2016/09/12
    ジャーナル フリー

    要 旨

    目的:再発・転移性乳がん患者がどのように病状や治療を認識し,日常生活の中で服

    薬を意味づけ,判断し,行動しているのかなど,服薬に関する経験を明らかにする.

    方法:再発・転移性乳がん患者を対象とし,半構造化面接による質的記述的研究を

    行った.

    結果:研究参加者4 名の服薬に関する経験は,【死の脅威と自分らしい生活とのバラ

    ンスの揺らぎ(A 氏)】【普通の生活の価値と治療の辞め時との葛藤(B 氏)】【腑に落ちない服薬の意義を巡る葛藤(C 氏)】【生き延びるために自分を鼓舞して続ける服薬(D 氏)】が導かれた.死の脅威や病状の不安が高まると,経口抗がん薬を“救世主”“生き延びるため”などと意味づけて,確実に服薬していた.一方,死の脅威が和らぎ,あるいは治療による身体の害の懸念,薬を避けたい感情が高まると,自分の生活に関心が向き,故意に薬をスキップ,飲み忘れることを繰り返していた.

    結論:再発・転移性乳がんの服薬に関する経験は,治療への感謝や期待などの肯定的

    な感情や認識と治療による身体の害や効果の疑念などの否定的な感情や認識との狭間で葛藤し,生活や価値観などを含めて自問を繰り返し,治療を意味づけることによって,故意にスキップする,うっかり飲み忘れる,あるいは確実に服薬などが導かれていた.看護師は患者の奥にある服薬の意味の理解に努め,抑制している感情をも含めた支援の必要性が示唆された.

  • 瀬沼 麻衣子, 藤本 桂子, 神田 清子
    2016 年 30 巻 2 号 p. 90-98
    発行日: 2016/09/25
    公開日: 2016/11/16
    [早期公開] 公開日: 2016/09/12
    ジャーナル フリー

    要 旨

    目的:前立腺がんにはさまざまな治療方法があることで,治療の選択時に悩みや葛藤

    が生じることが予測される.また,他のがんに比べて長期生存が望めることから,治療後の尿失禁に悩まされることなく暮らしたいなど,自分に合った治療を選択したいと願う患者は少なくない.本研究の目的は,重粒子線治療を選択した患者の意思決定プロセスを明らかにし,看護支援を検討することである.

    方法:対象者は,前立腺がんに対して重粒子線治療を受け,治療終了後1 年以内の患

    者14 名である.データ収集は半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(MGTA)を用いて質的帰納的に分析した.

    結果:本プロセスは,対象者ががん告知による衝撃を受けながらも病気を受け止め,

    前立腺がん治療に関する情報を獲得していた.その後,自己のゆずれない考えのもと,治療の価値を見出し気持ちが傾き,重粒子線治療が最適な治療だと確信し,治療の決定へと至っていた.

    考察:プロセスの特徴は,重粒子線治療と一度決めたら揺らがない意思決定であり,

    自己の価値観と照らし合わせ,治療後の生活を見据えた意思決定であった.看護支援としては,獲得した情報から自己の価値観に基づいた意思決定が行えているか見極め,治療後の身体的な側面だけでなく仕事や趣味など社会的な側面など,生活全体を捉えた選択ができるよう患者の気持ちに寄り添い支えていくことが重要である.

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