2018 年 32 巻 論文ID: 32_maeda_20180122
要 旨
がん患者の呼吸困難感は発生頻度が高く,がん性疼痛に比べて標準的治療が確立されていない緩和困難な症状である.呼吸困難の感じ方は個人差があるため,その評価は主観的な指標が中心となっている.本研究は,フットリフレクソロジーによるがん患者の呼吸困難感の変化を主観的・生理学的観点から明らかにし,呼吸困難感の評価指標としての自律神経活動の有用性について検討した.
呼吸困難感のある進行期がん患者8 名に対して,(介入群)と安静臥床(非介入群)を同一対象に実施した.施術は3 日間,1 回に20 分間実施し,施術前後は10 分間安静臥床とした.介入・非介入ともに実験の全行程において,心拍計によるモニタリングを行い,交感神経と副交感神経を分離評価できる心拍変動解析を行った.測定項目は,主観的評価(呼吸困難感,リラックス感,眠気),自律神経活動(心拍数,HF・LF/HF)とした.その結果,2 群間の有意差はみられなかったが,介入群は呼吸困難感が有意に低下した(p=0.034).触圧刺激による心地よさは自律神経系に影響を与えるとされ,リラックス感や眠気の有意な増加に対応して,自律神経活動は,心拍数の有意な低下(p=0.008)および施術終了後,副交感神経活動の参考指標であるHF の有意な上昇を示した(p=0.045).また呼吸困難感と自律神経活動の相関係数は,0.25-0.80 を示した.以上より,自律神経活動は,がん患者の呼吸困難感の評価指標となりうる可能性が示唆された.