2018 年 32 巻 論文ID: 32_watanabe_20180320
要 旨
本研究の目的は,終末期がん患者の輸液を減量・中止する際に看護師が行う合意形成支援プロセスを明らかにすることである.機縁法により選定されたがん看護経験年数5 年以上の看護師10 名を対象に半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.
分析の結果,看護師は,日々の患者との関わりで得られる輸液に関連した苦痛やQOL の情報から【輸液の意味の自問自答】を行い,【多職種での減量・中止の吟味】を図っていた.また,吟味された輸液の減量・中止を患者・家族に提案する際,『飢餓と悪液質との違いの説明』を基にした【輸液認識のパラダイムシフト】と〈揺れる思いへの寄り添い〉を円環的に行い合意形成へと向かっていた.これらには,減量・中止に『難色を示す家族への共感』や治療が少なくなっていく中での『見放され感への配慮』という【見捨てないことの保証】を行っていた.また,このプロセス全体を促進させる要因として,【変化する終末期の情報提供】や【可能な限りの経口摂取の促し】を行っていた.
看護師は,終末期だからとやみくもに減量・中止の検討を進めるのではなく,多様に出現している苦痛やQOL の低下と輸液との関連性について考え判断することが重要である.また,輸液の減量や中止が行われた後も,それに伴う効果や変化を伝えていくこと,家族がどう捉えているかを確認していくことも必要である.