日本臨床栄養学会雑誌
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ミネラルと石灰化
折茂 英生
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2021 年 43 巻 4 号 p. 188-197

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抄録
石灰化とはコラーゲンなどの基質にリン酸カルシウムの一種であるハイドロキシアパタイトが沈着することである.生理的石灰化は硬組織に,異所性石灰化は本来石灰化しない軟部組織や血管壁に起こる.石灰化に必要なものは基質となるI型コラーゲンなどのたんぱく質と,ハイドロキシアパタイトを形成するカルシウムとリンであり,骨芽細胞などから基質小胞とよばれるエクソゾーム様のベジクルが芽出され,小胞内で石灰化が開始される.石灰化には局所におけるミネラルの濃度が重要である.全身的なミネラル濃度の調節は主として3種のホルモン,すなわち副甲状腺ホルモン(PTH),活性型ビタミンD,FGF 23によって行われ,カルシウム,リンの濃度が一定に保たれている.ハイドロキシアパタイト生成の局所では無機リン酸と無機ピロリン酸の比が重要であり,基質小胞膜の組織非特異型アルカリホスファターゼ,NPP 1と骨芽細胞膜のANKHがこの調節を行う.石灰化に最も重要なのは無機リン酸濃度である.全身的な石灰化障害であるくる病,骨軟化症は低リン血症が原因であり,局所が原因の石灰化障害は無機ピロリン酸/無機リン酸比の増加によって起こる.
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© 2021 一般社団法人日本臨床栄養学会
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