日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
原著
小児急性虫垂炎クリニカルパス作成による診療上の効果
結城 敬依田 尚美山田 明美
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2009 年 11 巻 3 号 p. 245-252

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抄録

 急性虫垂炎は小児急性腹症のなかで最も頻度の高い疾患であるが、診断の遅れによる穿孔例や、不確かな診断に伴うnegative appendectomy症例が問題となっている。当院では2001年に急性虫垂炎クリニカルパスを作成し、さらに2005年には虫垂炎診断スコアを開発した。今回我々は、1998年から2008年までの11年間に急性虫垂炎の診断で手術を施行された15歳以下の小児183例を対象として、クリニカルパス作成前(第1期)、パス作成後診断スコア作成前(第2期)、診断スコア作成後(第3期)の3期間に分けて検討を行った。第1期と第2期を比較すると、術後合併症は22.8%から2.9%に減少し(非穿孔例では8.5%から0%、穿孔例では90%から20%)、術後平均入院期間も8.5 ± 4.2日から3.4 ± 4.0日へと有意に短縮した。さらに虫垂炎診断スコア作成により第3期にはnegative appendectomyも5.7%にまで減少した。クリニカルパスを作成するためには、自施設における過去症例を詳細に検討し、診療行為のひとつひとつに科学的根拠を求めることが要求される。その過程で多く問題点が浮き彫りにされ、新たな改善点が生み出される。このように仮説と検証を繰り返しながら、常にパスを改良し続ける姿勢が必要であろう。

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© 2009 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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