日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
11 巻, 3 号
日本クリニカルパス学会誌 第11巻 第3号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • A-Mi Shin, Hyo-Chan Jeon, Hee-Joon Park, Yoon-Nyun Kim, Won-Hyun Cho
    原稿種別: Review Article
    2009 年 11 巻 3 号 p. 233-241
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     The purpose of this study was to develop a clinical pathway for post-operative care of patients who have undergone a laparoscopic cholecystectomy and to determine the time- and cost-effectiveness using the Clinical Pathway Assistant (CPA) program. The procedure was performed with the following steps: establishment of a conceptual framework, development of a preliminary clinical pathway using the CPA program, expert validity test, and confirmation of the final clinical pathway. The patient’s admission period with respect to time- and cost-effectiveness was confirmed as 3 days, and each item of assessment, test, medication, treatment, diet, activity, and teaching were finalized. It was verified that the time and cost to develop a clinical pathway can be reduced by the CPA program, because this program can automate the complicated process, which consists of collecting and cleaning the large size EMR data, classifying, and confirming the items in the clinical pathway.

原著
  • 結城 敬, 依田 尚美, 山田 明美
    原稿種別: 原著
    2009 年 11 巻 3 号 p. 245-252
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     急性虫垂炎は小児急性腹症のなかで最も頻度の高い疾患であるが、診断の遅れによる穿孔例や、不確かな診断に伴うnegative appendectomy症例が問題となっている。当院では2001年に急性虫垂炎クリニカルパスを作成し、さらに2005年には虫垂炎診断スコアを開発した。今回我々は、1998年から2008年までの11年間に急性虫垂炎の診断で手術を施行された15歳以下の小児183例を対象として、クリニカルパス作成前(第1期)、パス作成後診断スコア作成前(第2期)、診断スコア作成後(第3期)の3期間に分けて検討を行った。第1期と第2期を比較すると、術後合併症は22.8%から2.9%に減少し(非穿孔例では8.5%から0%、穿孔例では90%から20%)、術後平均入院期間も8.5 ± 4.2日から3.4 ± 4.0日へと有意に短縮した。さらに虫垂炎診断スコア作成により第3期にはnegative appendectomyも5.7%にまで減少した。クリニカルパスを作成するためには、自施設における過去症例を詳細に検討し、診療行為のひとつひとつに科学的根拠を求めることが要求される。その過程で多く問題点が浮き彫りにされ、新たな改善点が生み出される。このように仮説と検証を繰り返しながら、常にパスを改良し続ける姿勢が必要であろう。

実践報告
  • 細見 昌弘, 勝二 達也, 笹田 友恵, 綱田 良一, 條野 孝雄
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     当院では『クリニカルパスを軸とした電子カルテ』の導入に伴い、クリニカルパス内の諸データを、DWHサーバー取り込み・蓄積している。2008年1月1日より半年間、当院泌尿器科において適用された413パスにつき、バリアンス数の多いアウトカムごとにバリアンス分析を行うとともに、バリアンス数/アウトカム実測回数の比率の高いアウトカムについてもバリアンス分析を行った。また、特定のアウトカムについて泌尿器科と心臓内科のパスを比較してバリアンス分析を試みた。その結果、DWHを用いたバリアンス分析ではパスの枠を超えての分析や、診療科間の診療・看護の解析に有用と思われた。また、単一パスでの分析も、より標本数を多くとれることから、統計学的解析に有用と思われた。

  • 前田 司紗, 浅井 千尋, 酒井 美幸, 大河内 香, 吉本 千鶴, 花房 陽子
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     本研究は、使用中の患者用パスには患者の意見が取り込まれていないことより、患者の知りたい情報が提供できているのかを知り、患者が知りたい情報を得ることで、今後のパス改定の示唆とすることを目的とした。当病棟で食道切除術、肝臓切除術、膵頭十二指腸切除術、肺・縦隔切除術においてクリニカルパス(以下パス)を使用した患者50名を対象に研究者独自が作成した選択式自記式質問紙を用いてアンケート調査を実施した。結果、各質問において、「傷の痛みについて」の項目が最も多く見られ、患者は、想像以上の痛みを体験しており、術後の痛みの程度や緩和法の情報を求めていることがわかった。次に多く見られた項目は、「傷以外の症状について」であり、合併症を持っている患者は患者特有の症状についての情報を求め、退院が近くなると、どのように生活が変容するのかという手術後の生活についての情報を求めていることがわかった。その他に患者の意見から、患者自身がパスを工夫し使用していること、患者は直接記載して活用できるパスを希望していることがわかり、今後のパス改定に向けての示唆を得た。

  • 電子カルテクリニカルパスへのリハビリ指示組み込みによる効果
    渡部 憲昭, 今田 隆一, 工藤 雄一郎, 横山 雅則, 菅井 鋼平, 中尾 義明
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 3 号 p. 267-271
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     当院では、脳卒中急性期電子カルテクリニカルパスに入院当日からのリハビリテーション(以下リハビリ)指示を組み込むことにより、早期リハビリの徹底に取り組んだ。取り組み前後の脳卒中急性期リハビリの変化について検討した。

     取り組み前後1年間の脳卒中急性期症例(前期群76例、後期群214例)において、入院からベッドサイドリハビリ開始までの期間は、平均7.6日から1.7日に短縮した。また、早期離床の危険因子(意識障害、主幹動脈の狭窄・閉塞)や脳卒中病型に対応したベッドサイドリハビリが進められた。前期群に比し後期群では、平均入院期間の短縮、機能予後良好例の増加が認められた。

     電子カルテ機能の活用により、各職種間の共通認識・情報共有化が促進され、早期リハビリが徹底された。

  • 杉野 安輝, 三田 亮, 大田 亜希子, 加藤 誠章, 髙木 康之, 藤井 美智子, 塚本 光子, 成瀬 みゆき, 前 千登世, 佐野 マス ...
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 3 号 p. 273-282
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     喘息診療における基幹病院とかかりつけ医間の病診連携ツールとして、喘息コントロールテスト(ACT)を用いた喘息地域連携パスを愛知県豊田地区において導入したので、その経緯と現状を報告する。まず院内で医師、看護師、薬剤師など多職種による喘息連携パス作成チームを立ち上げ、連携パスのプロトタイプを作成した。その後、喘息地域連携会議で連携パスを最終調整し、2008年10月に本格運用を開始した。連携パスの喘息コントロール指標には、かかりつけ医や患者による喘息症状評価が簡便に行えるACTを採用した。連携パスの適用基準は、外来で症状コントロール可能な喘息患者とし、ACT ≧ 20点かつピークフロー値≧80%を2回以上連続して達成した場合にかかりつけ医へ紹介とした。適用期間は紹介後1年間である。かかりつけ医での治療目標もACT ≧ 20点の継続とし、喘息診療ガイドラインとACTに基づく診療フローチャートにて喘息治療の標準化をはかった。また、患者用パスや喘息指導内容を包括的にまとめた「ぜんそく手帳」を作成し患者指導に利用した。これまで連携パスの適用は9例であり、かかりつけ医へ紹介後半年を経過した4例中2例では連携パスによる治療が継続されており、喘息コントロールもACT24〜25点と良好であった。今後は連携パスの地域浸透をはかるとともに、パス適用例のデータを蓄積し、パスの評価と改善を定期的に実施していく予定である。

  • 新保 健次, 太田 信也, 清水 啓史, 陳 宗雅, 平田 正純, 藤井 敏之, 黒川 正夫
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 3 号 p. 283-288
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     腰椎椎間板ヘルニア摘出術に対しクリニカルパス(以下CP)の改訂を行った。対象は2005年7月から2008年3月に手術を施行された45例、平均年齢39.5歳(17~68歳)であった。術後14日で退院を目標としており、これを超えた症例を超過例とした。術後在院日数、術後から立位、歩行器歩行、独歩が開始されるまでの日数を調査した。各々の動作開始日、年齢と術後在院日数との相関関係を検討した。また術翌日、術後2日目に動作開始が可能であった症例数、超過例を除いた術後在院日数を調査し新CPを作成した。超過例は3例であり、身体的要因が2例、社会的要因が1例であった。身体的要因は、泌尿器科的疾患、疼痛の残存であった。平均術後在院日数は8.6日であった。術後動作開始日数は、立位は平均1.2日、歩行器歩行は平均1.2日、独歩は平均2.6日であった。独歩開始日と術後在院日数の間で正の相関が認められた。術翌日で立位は36例、歩行器歩行は22例、独歩は12例で開始できた。術後2日目には29例が独歩可能であった。新CPでは術翌日より「疼痛に応じて歩行器、自立歩行が可能」とし、術後8日目での退院を目標とした。退院基準を「約500m歩行可能であり、下肢痛、しびれ感の増強がないこと」とした。独歩開始日の遅延は入院期間の延長となる可能性があることが示唆された。独歩の早期獲得はCPを円滑に進めるうえで重要であると考えた。

  • 西村 裕之, 加用 樹里, 松岡 真弓
    原稿種別: 実践報告
    2009 年 11 巻 3 号 p. 289-294
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2022/03/30
    ジャーナル フリー

     高知県幡多地域で、「脳卒中地域連携クリニカルパス(脳卒中連携パス)」を1年間運用した結果を報告するとともに、運用結果を検討し、「脳卒中連携パス」の適応基準の改定、新たな「脳卒中病診連携パス」の導入等、脳卒中の地域連携体制の見直しを行った。

     「脳卒中連携パス」は148名に適応され、パス終了56名、中止61名、急性期入院中5名、回復期入院中26名であった。

     「脳卒中病診連携パス」は2008年6月23日から、運用開始し、2009年4月30日までに、登録されている23連携医療機関中、20施設、74名に101回パスが適応された。25名が2回目、2名が3回目のパスシートが発行されている。

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