日本クリニカルパス学会誌
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Print ISSN : 2187-6592
実践報告
呼吸器科以外の内科診療科における肺炎クリニカルパスの活用
杉野 安輝滝 俊一奥村 隼也三田 亮大田 亜希子髙木 康之佐野 マスミ宇野 昌利中林 敏
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2012 年 14 巻 3 号 p. 218-223

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抄録

 人口の高齢化に伴い肺炎の入院患者数は増加しており、呼吸器科のみでは肺炎入院診療が困難な状況にある。当院では2005年9月から肺炎入院診療において、ユニット型の肺炎電子化クリニカルパス(肺炎パス)を順次導入し運用してきた。今回、呼吸器科以外の内科診療科における肺炎パスの活用状況を分析し、成果と課題につき検討した。対象は2010年4月から2011年3月の1年間に、各種肺炎パスを適用したのべ350例。呼吸器科以外の適用率は全体の22%で、市中肺炎初期パス(109例)と誤嚥性肺炎軽・中等症初期パス(105例)の適用症例が多かった。市中肺炎初期パスは呼吸器科以外が19%で、内訳は各科ほぼ均等な適用率であったのに対して、誤嚥性肺炎軽・中等症初期パスは呼吸器科以外が42%で、神経内科の適用率が26%と高かった。DPCデータを利用し、誤嚥性肺炎軽・中等症初期パス適用症例で診療アウトカムを比較したところ、平均在院日数、院内死亡率、診療コストともに呼吸器科以外のほうが呼吸器科よりも良好な成績であった。患者背景として呼吸器科は重症例が多かった。呼吸器科以外の診療科でも肺炎パスの活用にて、一定の質を維持した肺炎診療が実践できていた。再入院率は呼吸器科以外で高く、初期パス終了後の継続パス導入による診療プロセスの標準化が必要と考えられた。肺炎パスは呼吸器科以外の内科診療科においても有用な肺炎診療支援ツールである。

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© 2012 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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