2013 年 15 巻 3 号 p. 172-176
医療・介護関連肺炎(nursing-healthcare associated pneumonia;NHCAP)は呼吸器内科医、感染症内科医以外の医師が治療に携わる機会の多い疾患であるが、抗菌薬の選択や治療効果判定の手法などは医師ごとに異なる。そこでNHCAP入院患者の治療内容および予後を後ろ向きに解析した上でクリニカルパスを導入し治療効果を向上させたことを報告する。
2011年4月から9月に入院したNHCAPの患者156名に関して投薬状況や在院日数などを調査し、その結果を踏まえパスを作成運用し、運用以前(2011年4月から9月まで、パス適合患者124名)と運用以後(2011年9月から2012年8月まで、152名)の死亡退院率や在院日数などを比較した。
パス導入前の調査では約半数の症例で推奨量に満たない抗菌薬投与が行われており、推奨量投与群と比較して低用量投与群の死亡率が10%程度高値であったため、パスでは腎機能を考慮しつつも可能な限り高用量の抗菌薬投与を指定した。パス導入前のNHCAP入院患者の死亡退院率は26.6%に対し導入後は19.7%(p=0.18)と減少し、軽快退院患者の平均在院日数は30.7日から25.5日(p=0.01)と有意に短縮した。
パス導入によりNHCAP入院患者の治療に関して良好な結果が得られた。呼吸器内科医や感染症内科医が不在の病院でも高用量の抗菌薬治療を行い、治療を標準化することでより良好なアウトカムが得られると考える。