日本クリニカルパス学会誌
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実践報告
消化器外科術後の尿閉のリスク因子を踏まえたパス改訂
小田切 範晃宮本 剛士五味 卓宇根 範和井出 大志加藤 博樹山田 豊平野 龍亮吉福 清二郎三澤 賢治笹原 孝太郎岸本 浩史三島 修田内 克典
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2015 年 17 巻 2 号 p. 143-147

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抄録

対象・方法:2011年11月から2013年12月に胃癌、結腸癌、直腸癌に対して予定手術が施行された400例を対象に、術後尿閉のリスク因子について統計学的に検討を行い、その結果に基づいてクリニカルパス(以下、パス)の改訂を行った。パス改訂後の100例について尿閉頻度などを集計し、パス改訂前の症例と比較、検討を行った。

結果:術後尿閉を来した症例は43例(10.8%)であった。単変量解析、ロジスティック回帰分析では後期高齢者、硬膜外麻酔が有意なリスク因子であった。硬膜外麻酔が施行されて尿閉を来した症例は全例硬膜外カテーテル留置下で尿道カテーテルが抜去されていた。

パスの改訂:硬膜外カテーテル留置下での尿道カテーテル抜去が術後尿閉の主因と考えられたため、主治医の指示で術後1〜3病日のいずれかの朝に硬膜外カテーテルを抜去し、その3時間以降に尿道カテーテル抜去の方針とした。

パス改訂後の結果:パス改訂後の100例の中で術後尿閉を来した症例は1例(1%)のみであった。硬膜外カテーテルは中央値術後2病日(最小1 〜最大3)と改訂前より有意に早期に抜去されていたが、NRS(Numerical Rating Scale)による疼痛評価ではパス改訂前後で統計学的に有意な差は認められなかった。

まとめ:硬膜外カテーテル、尿道カテーテルの抜去時期の変更のみで、疼痛の増悪を伴わずに術後尿閉を著明に減少させることが可能であった。

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© 2015 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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