2015 年 17 巻 2 号 p. 148-154
当院では2000年に人工膝関節置換術パス(以下、TKAパス)を作成し、三度の改訂を経て現在に至っている。四度目のクリニカルパス(以下、パス)改訂にあたり、TKAパスを使用している医師・看護師・リハビリテーションスタッフ全員の意見をアンケートにより収集し、KJ法を用いて問題点を整理するとともに、過去5年間にTKAパスを使用した348症例についてバリアンス分析を行った。
収集した意見を検討した結果、情報共有が不十分である、評価が不足している、適切に運用されていない、患者用パスがわかりにくいなどの問題点があげられた。また、医師からは人工膝関節置換術施行全症例でのパス使用について要望があった。バリアンス分析では、退院調整の遅れや適応基準が守られていないなどの問題が明らかとなった。
改訂では、全例にパスを使用するため、患者状態に応じて歩行獲得目標を個別に設定し、退院基準を変更することで全例に適応させた。情報共有を強化し、評価を確実に実施するため、中間目標ごとのADL・歩行状態と、医師の評価欄を設けたオーバービューシートを新設した。さらに退院調整を円滑に行うため、術前の生活状況と退院調整の進捗状況欄を設けた。患者用パスをわかりやすくするため、中間目標ごとに患者目標を明記した日めくり形式のパスに変更した。適切に運用するために運用マニュアルを作成した。