日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
実践報告
Basic Outcome Masterを用いた大腿骨近位部骨折地域連携クリニカルパスによる地域連携医療のアウトカム分析:第1報
町田 二郎安樂 喜久藤田 清美山田 浩二山内 布美子西岡 智美小妻 幸男堀田 春美宮下 恵里副島 秀久益田 ひろみ荒木 佑太谷川 和代依光 茂太
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2020 年 22 巻 1 号 p. 22-29

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抄録

 済生会熊本病院(以下、済熊)と平成とうや病院(以下、とうや)との間で運用する大腿骨近位部骨折地域連携クリニカルパス(以下、パス)を作成した。使用する医療用語は日本クリニカルパス学会から刊行されているBasic Outcome Maste(以下、BOM)を使用し看護記録を日めくりパスに変更した。また、転倒転落評価、嚥下機能評価、疼痛評価ツールを共通化し4例に試行運用した。とうやでは連携パス、日めくりパス導入前は負荷が増加する不安があったが、運用開始後は看護観察内容と看護ケアの標準化および質改善を実現し、多職種間で遅滞なく患者情報を確認できるという肯定的な評価に変化した。

 さらに連携パスを10名に運用し、急性期、回復期におけるアウトカムの変化を可視化し分析した。生命・合併症に直結する患者状態バリアンスは急性期の術後5日間に集中したが合併症発症はなく、回復期でも合併症発症のために急性期へ再入院する例はなかった。回復期では排便・睡眠バリアンスが多かった。急性期の生活動作・日常動作・リハビリアウトカムは食事摂取バリアンスが多く、車いす移乗バリアンスはなかった。回復期ではActivity of Daily Living(以下、ADL)の評価指標としてFunctional Independence Measure(以下、FIM)を採用した。回復期入院後ADLは徐々に改善したが5週間程度でFIM値は横ばいになった。認知症者のFIMも改善したが利得はより小さく平均在院日数は長かった。

 BOM使用連携日めくりパスデータの可視化により、地域連携医療プロセスの課題がわかりやすくなった。

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© 2020 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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