目的:大腿骨近位部骨折は骨折形態により手術方法や耐荷重性が異なるため、手術方法に合わせた訓練を施行する必要がある。当院では骨折形態に合わせて人工骨頭置換術後パス、転子部安定型骨折術後パス、転子部不安定型骨折術後パスの3種類を作成し運用している。今回は不安定型を除く2種類のリハビリパスのバリアンス分析を行い、その妥当性について検討した。
方法:対象は過去3年間にパスを適用した276例で、人工骨頭パス142例、転子部安定型パス134例。オールバリアンス方式によりバリアンスを収集した。
結果:バリアンス発生率は、人工骨頭パス75.3%、転子部安定型パス76.8%と両者とも高頻度であった。リハビリ前半まではバリアンス発生は少なかったが、リハビリ後半での「歩行不安定による遅れ」が最多であった。
考察:リハビリ前半では正のバリアンスが比較的多く早期荷重のリスクが低いと判断し、両パスとも術後翌日から全荷重開始へ変更した。リハビリ後半での歩行獲得遅延に対しては、歩行器歩行と杖歩行の間にシルバーカー歩行やピックアップ歩行器歩行を追加することでバリアンスが減少されると考えた。受傷前の身体機能や認知機能もバリアンス発生要因となるため、パス運用において患者個々の状態に応じた柔軟なアウトカム設定が必要と考えた。
結論:大腿骨近位部骨折術後リハビリパスのバリアンスを分析、アウトカムの妥当性を検証しパスを改訂した。