日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
22 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第22巻 第1号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 町田 二郎, 河村 進, 井内 郁代, 伊藤 淳二, 大石 智, 下村 裕見子, 岡本 泰岳, 佐藤 耕一郎, 嶋田 元, 白鳥 義宗, 舩 ...
    原稿種別: 総説
    2020 年 22 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     Basic Outcome Master(以下、BOM)version 3.0が刊行された。最大の特徴は一般社団法人医療情報システム開発センター;Medical Information System Development Center(以下、MEDIS-DC)看護実践用語標準マスター看護観察編(以下、看護マスター)やJapan Laboratory Code(以下、JLAC)version 10/11との紐付きが明確になり、BOM観察項目の標準化が格段に進んだことである。MEDIS-DC看護マスターと同等の構造化、表現タイプ(数値型、列挙型など)、結果値、結果も含め、すべて連動しているため、入力形式の精度が格段に高くなるだけでなく、バリアンス認識が曖昧でなくなるためクリーンなデータ収集が可能になる。この構造こそOutcome-Assessment-Task(以下、OAT)ユニットといわれる診療プロセスを電子的に表現する基本単位の概念を具現化する重要要素といえる。日めくり式クリニカルパス(以下、日めくり式パス)は24時間間隔のOATユニットの集合体であり、BOM version 3.0により構成される日めくり式パスのユーザーインターフェイスが改善され、観察項目が適性値外になった際の容易な識別機能や通知機能が付加されることで、安全管理ツールとしても機能する。用語マスターの電子的構造はアウトカム名称-観察項目名称=1:n、観察項目名称-看護ケア名称=1:1の関係になるよう配慮され、パスと看護記録の連携がよりスムースになる。BOM version 3.0を用いれば疾患や病態を問わない汎用的な基本OATユニットと、特定の疾患や病態の特異性に応じた最低基本要件としてのOATユニットという概念で構成される汎用日めくり式パスが作成可能であり、ビッグデータを集積することで複雑な疾患や病態の層別化に資するであろう。

実践報告
  • 伊東 正嗣, 佐藤 勝彦, 菅野 幸子, 半澤 祥子, 山本 真由
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 22 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:大腿骨近位部骨折は骨折形態により手術方法や耐荷重性が異なるため、手術方法に合わせた訓練を施行する必要がある。当院では骨折形態に合わせて人工骨頭置換術後パス、転子部安定型骨折術後パス、転子部不安定型骨折術後パスの3種類を作成し運用している。今回は不安定型を除く2種類のリハビリパスのバリアンス分析を行い、その妥当性について検討した。

    方法:対象は過去3年間にパスを適用した276例で、人工骨頭パス142例、転子部安定型パス134例。オールバリアンス方式によりバリアンスを収集した。

    結果:バリアンス発生率は、人工骨頭パス75.3%、転子部安定型パス76.8%と両者とも高頻度であった。リハビリ前半まではバリアンス発生は少なかったが、リハビリ後半での「歩行不安定による遅れ」が最多であった。

    考察:リハビリ前半では正のバリアンスが比較的多く早期荷重のリスクが低いと判断し、両パスとも術後翌日から全荷重開始へ変更した。リハビリ後半での歩行獲得遅延に対しては、歩行器歩行と杖歩行の間にシルバーカー歩行やピックアップ歩行器歩行を追加することでバリアンスが減少されると考えた。受傷前の身体機能や認知機能もバリアンス発生要因となるため、パス運用において患者個々の状態に応じた柔軟なアウトカム設定が必要と考えた。

    結論:大腿骨近位部骨折術後リハビリパスのバリアンスを分析、アウトカムの妥当性を検証しパスを改訂した。

  • 町田 二郎, 安樂 喜久, 藤田 清美, 山田 浩二, 山内 布美子, 西岡 智美, 小妻 幸男, 堀田 春美, 宮下 恵里, 副島 秀久, ...
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 22 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     済生会熊本病院(以下、済熊)と平成とうや病院(以下、とうや)との間で運用する大腿骨近位部骨折地域連携クリニカルパス(以下、パス)を作成した。使用する医療用語は日本クリニカルパス学会から刊行されているBasic Outcome Maste(以下、BOM)を使用し看護記録を日めくりパスに変更した。また、転倒転落評価、嚥下機能評価、疼痛評価ツールを共通化し4例に試行運用した。とうやでは連携パス、日めくりパス導入前は負荷が増加する不安があったが、運用開始後は看護観察内容と看護ケアの標準化および質改善を実現し、多職種間で遅滞なく患者情報を確認できるという肯定的な評価に変化した。

     さらに連携パスを10名に運用し、急性期、回復期におけるアウトカムの変化を可視化し分析した。生命・合併症に直結する患者状態バリアンスは急性期の術後5日間に集中したが合併症発症はなく、回復期でも合併症発症のために急性期へ再入院する例はなかった。回復期では排便・睡眠バリアンスが多かった。急性期の生活動作・日常動作・リハビリアウトカムは食事摂取バリアンスが多く、車いす移乗バリアンスはなかった。回復期ではActivity of Daily Living(以下、ADL)の評価指標としてFunctional Independence Measure(以下、FIM)を採用した。回復期入院後ADLは徐々に改善したが5週間程度でFIM値は横ばいになった。認知症者のFIMも改善したが利得はより小さく平均在院日数は長かった。

     BOM使用連携日めくりパスデータの可視化により、地域連携医療プロセスの課題がわかりやすくなった。

研究報告
  • 町田 二郎, 安樂 喜久, 藤田 清美, 山田 浩二, 山内 布美子, 西岡 智美, 堀田 春美, 宮下 恵里, 小妻 幸男, 副島 秀久, ...
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 22 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     Basic Outcome Maste(以下、BOM)を用いた大腿骨近位部骨折地域連携クリニカルパス(以下、パス)を34名に適用し、回復期病院での転帰を自宅退院、施設転所、慢性期病院転院、急性期病院転院の4群に分けその要因を分析した。転帰割合は自宅退院56%、施設転所32%、慢性期病院転院3%、急性期病院への転院9%であった。転帰別平均年齢、平均在院日数に有意差はなかった。認知症併存率は自宅退院者47%、施設転所者82%、慢性期病院転院者100%、急性期病院転院者67%であった。入院時Functional Independence Measure(以下、FIM)運動5項目(清拭入浴、トイレ動作、ベッド移乗、トイレ移乗、歩行)は自宅退院者、施設転所者、慢性期病院転院者、急性期病院転院者の順に低下し、認知症者ではさらに低値であり、入院時FIMと認知症が転帰を左右していた。さらに脳卒中、虚血性心疾患、骨折等の既往も転帰に影響していた。回復期の転帰は慢性期医療ニーズに直結し、これを左右する要因である①認知症、②機能回復と維持、③合併症発症、④併存疾患の悪化(二次骨折を含む)に関する医療情報を可視化し確実に把握する上で、BOM使用連携日めくりパスは重要な医療情報基盤になることが明らかになった。

     回復期施設にBOM使用日めくりパスを導入することで、看護観察評価とアウトカム評価の関係性が理解され、Activities of Daily Living(以下、ADL)改善の経過がわかりやすくなり、看護の標準化とレベル向上につながった。今後はBOMのADL関連項目の拡大が課題である。

実践報告
  • 青木 有加, 堀本 純子, 関本 員裕
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 22 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    目的:当院では2017年度から小児食物経口負荷試験(以下、負荷試験)を開始した。小児科病棟看護師は、経験年数や病棟在籍年数、負荷試験経験回数が様々であったため、クリニカルパス(以下、パス)による可視化が必要と考え、2018年に食物経口負荷試験クリニカルパス(以下、負荷試験パス)を作成した。

    方法:日本小児アレルギー学会のガイドラインに準拠してパスを作成した。薬剤を本人用であらかじめ処方し、投与患者・薬剤の間違いを防ぐとともに症状出現時に迅速な対応ができるように工夫した。また、パス画面にバイタルグラフを組み込み、パス画面上でも時系列で入力と確認ができるようにした。

    結果:2018年で延べ80名に負荷試験が実施され、同年11月現在で病棟看護師の約8割が負荷試験を経験した。パス適用件数は65件で、そのうちバリアンス件数は21件(32.3%)、発熱等の理由でパス適応前に負荷試験が中止となったのは15件であった。また、最終摂取後2時間以降に重篤な症状が出現する例はなかった。

    考察:負荷試験はアナフィラキシーを起こす可能性があり、いかに迅速に適切な対応ができるかが求められる。2018年4月に負荷試験パスを作成、導入した結果、「アナフィラキシー時に慌てることなく迅速に対応ができた」、「患者指導がスムーズに行えた」などの意見があった。

    結論:看護師経験年数や病棟在籍年数、負荷試験の経験に差があっても、パスを使用することで統一された医療・看護が提供できた。

  • 濱岡 晃弘, 寺田 久仁子, 大島 一男
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 22 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2020/03/24
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

     鼓室形成術の術後合併症として、血腫や創部感染、顔面神経麻痺、めまい、耳鳴、味覚障害・舌のしびれなどが挙げられる。耳漏からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下、MRSA)やメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(以下、MRCNS)が検出された症例に対し、当院では抗MRSA薬の点滴投与および塩酸バンコマイシン(以下、VCM)の点耳処置を施行している。そのため、入院期間の延長を要した症例が多く、既存の鼓室形成術パスでは、抗MRSA薬の点滴投与指示や点耳薬の処方変更の追加指示はバリアンスとなっていた。また、抗MRSA薬の点滴投与に伴う副作用の出現時期や観察視点について、統一されていなかった。そのため、治療の変更内容の把握を目的に、バリアンスの集計・分析を行った。そして、抗MRSA薬の点滴投与指示および点耳薬の処方が追加された鼓室形成術パスの改訂に至った。

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