2002 年 4 巻 2 号 p. 11-17
アウトカムやクリティカルインディケーターは、明らかなエビデンスに基づき設定されることが望ましいが、いまだ根拠が明らかになっていないものも多い。今回、当院で作成した脳梗塞クリニカルパスに従った座位耐性訓練時に生じた血圧低下が、治療経過に与える影響について検討を行った。対象は、脳梗塞クリニカルパス使用、臨床病型確定、理学療法実施の条件を満たした81例とし、軽症例に用いる離床過程が早いハイアップコースと、重症例に用いるAコースそれぞれにおける血圧低下を認めたバリアンスについて調査を行った。その結果、バリアンスの発生率はハイアップコースでは34.0%、Aコースでは17.9%であった。理学療法実施期間は、ハイアップコースでは第2病日ベッドアップ60度、Aコースでは第2病日ベッドアップ30度のバリアンス症例では有意に延長していた。その原因として、ハイアップコースでは神経症候の変化と、Aコースでは入院経過中の肺炎発症およびMRSA感染との間に有意な関連を認めた。在院日数は、Aコースにおいて有意に延長していた。脳梗塞急性期では、第2病日の血圧低下が治療全体に影響を及ぼすクリティカルインディケーターとなる可能性が示唆された。