日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
実践報告
クリニカルパス改善における薬剤師の役割
―予防的抗菌薬投与について―
前島 和俊丸岡 博信須田 景子茂木 英子大竹 貫一金子 心学横沢 郁代池谷 俊郎
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2003 年 5 巻 1 号 p. 85-89

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抄録

 前橋赤十字病院では医療の質の向上と効率化を目的としてクリニカルパス(以下パス)活動を推進しており、2001年9月には100を超えるパスが作成・運用されている。これらのパスのうち、手術または侵襲を伴う検査に作成された84のパスで感染予防を目的として抗菌薬が投与されていた。そこで薬剤部は抗菌薬の予防投与について検討し、43のパスでガイドライン等に示されている抗菌薬の選択、投与法の基準との乖離をパス大会で指摘した。また文献と当院の細菌検査で得られた抗菌薬のMICを根拠に感染対象微生物を想定し、手術を汚染度別に分け、それぞれに適切な抗菌薬を推奨した。その結果19のパスで使用される抗菌薬、投与日数、投与開始時期が変更された。変更されたパスから成人鼠径ヘルニア根治術と人工膝・股関節置換術を選び、手術部位感染(surgical site infection, SSI)について検証した。

 成人鼠径ヘルニア根治術では、抗菌剤が第2・第3世代セフェム剤から第1世代セフェム剤に変更された。また人工膝・股関節置換術では、経静脈的およびその後の内服薬投与期間が短縮され、投与開始時期も術直前に変更された。これらのパスの変更前後について検討した各々91例、68例で手術部位感染は認められず、感染徴候でも有意な変化はなかった。

 エビデンスに基づいた薬剤部の提言により、抗菌薬が適正に使用されたものと考える。

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© 2003 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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