日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
5 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第5巻 第1号 (Jul.25.2003)
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原著
  • 平野 誠, 柴田 和彦, 茶谷 和恵, 阿部 定子, 小林 絹子, 丸岡 ひとみ, 高瀬 美咲枝
    原稿種別: 原著
    2003 年 5 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     癌化学療法において、リスクマネジメントの徹底は急務である。そこでわれわれは癌化学療法をハード面とソフト面の両面において改善を試み、リスクマネジメントの徹底を模索した。まず、全職員を対象にオンコロジー勉強会を開催し、癌および癌化学療法に対する知識の向上とリスクマネジメントの啓発を行った。毎回約50名の医師、看護師、薬剤師、コメディカルが集まった。その結果、ハード面では外来点滴センターの開設の必要性が提案され、またソフト面では化学療法レジメンの統一、クリニカルパスの導入などが議論された。ハード面での外来点滴センターは委員会を設けて設計・運営方法などを十分検討した後、平成14年7月に9床で開設した。開設後5ヶ月経過した現在、外来化学療法は1日平均4人、利用者は1日平均10人であった。スタッフは常駐医師1人と専任看護師1人と兼任看護師2人である。外来点滴・注射業務が1ヶ所に集約され医療の効率化につながり、また患者にも好評である。一方、ソフト面ではレジメン内容と指示方法の統一をはかるために化学療法計画書および化学療法指示箋をエクセル画面で作成した。さらにクリニカルパスを導入することによって癌化学療法の標準化・効率化が推進された。今後、さらに副作用パンフレットなどの作成にも取り組み、患者にもわかりやすい治療を提供するとともに医療事故を未然に防止できる体制を整えたいと考えている。

  • 山内 宏哲, 井口 秀人, 松本 恒司, 松本 章夫, 西尾 雅年, 阿部 洋介
    原稿種別: 原著
    2003 年 5 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当科での胃潰瘍入院治療を標準化するために、臨床データをretrospectiveに検討し、それに基づいた胃潰瘍入院クリニカルパスを作成することを目的とした。胃潰瘍入院患者46名を対象とし、年齢、性別、合併症の有無、抗凝固剤内服の有無、輸血施行の有無、潰瘍底の露出血管の有無について分類した後、食事開始病日と食事開始後在院日数を比較した。有意差を認めた項目に対して消化器内視鏡指導医2名、同認定医1名により合理的理由の有無を検証し、それに基づき適応基準、絶食日数、食事開始後の在院日数を決定した。作成した胃潰瘍入院パスは、食事開始日を境に絶食期間と摂食期間に分類し、絶食期間をさらに二期に分割した。絶食期間は最大約5日間、摂食期間は10日間と設定した。アウトカム(クリニカルインディケーター)は潰瘍底の状態とした。パス作成後に胃潰瘍入院患者21症例に対してパスを使用した。本検討の対象46症例とパスを使用した21症例における食事開始日と食事開始後在院日数を比較すると、食事開始日は5.91病日:4.52病日と有意に短縮し、食事開始後在院日数は11.19病日:9.61日と短縮傾向にあった。また、再吐血率を比較すると、7.9%:11.7%と有意差は認めず、合併症を増加させることなく絶食日数および在院日数の短縮が図れた。今後さらに症例を積み重ねることにより、より強いエビデンスを作成できると考えられた。

  • 山根 哲郎, 岡野 晋治, 向井 弘美, 高城 一郎, 小田原 靖, 山添 道明, 津島 智
    原稿種別: 原著
    2003 年 5 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院では1999年8月よりクリニカルパス(CP)を導入した。今回、CP導入前後の在院日数・総入院診療費・1日当りの診療単価を検討することにより、病院経営におけるCPの経済効果を評価した。2001年には腹腔鏡下胆摘の87.7%、成人鼠径ヘルニアの81.5%にCPを利用した。そこで腹腔鏡下胆嚢摘出術・成人鼠径ヘルニア根治術の症例を1999年8月から12月までのCP使用前、2000年1月から5月までのCP使用直後、2001年10月から2002年2月までの最近の3期に分け、CP使用前後の各時期20症例について比較・検討した。腹腔鏡下胆嚢摘出術では、CP使用前・後・最近で各々時期の在院日数はCP使用前と最近では約4日間の在院日数の短縮がみられ、1日単価も約2,500点の増収を見た。しかし、総入院診療費は減少する傾向であった。成人鼠径ヘルニアも在院日数はCP使用により約3日間短縮した。1日単価も約1,000点の増収となり、最近ではその傾向はさらに著明で、総入院診療費も同様に減少する傾向にあった。在院日数の短縮にはCPによる術前の説明が有効であり、在院日数の短縮が1日単価の増加と総入院診療費の低下につながり、DRG/PPSの今後の運用にも有利と考えた。今後、CPの有効利用と改善により、在院日数の短縮、1日単価の増収など病院の経営に貢献し、効率的なベッド稼動ができると考えた。

  • 込山 修, 木村 和弘, 市川 正孝, 山本 敬一, 吉原 宏樹, 清水 貞好
    原稿種別: 原著
    2003 年 5 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     RSウイルス抗原が迅速検査で陽性の呼吸器感染症入院患児72例(肺炎32例、気管支炎40例)に対して、クリニカルパス(パス)を用いて加療し、集積したデータからパスの妥当性を評価するとともに、抗生剤投与の必要性について検討した。パスは、従来の入院治療例を参考に検査・治療内容を統一し、抗生剤は奇数日入院患児には投与、偶数日入院患児は非投与を原則としたが、合併症が示唆される症例などでは主治医の判断により投与可能とした。患児の大半は入院後3日以内に下熱し、1週間前後で退院しており、パスとしては妥当なものと考えられる。5例は発熱が続いたため途中から抗生剤を投与したが、その内4例に合併感染を認めた。これを除いた非投与群23例(肺炎5、気管支炎18)と投与群44例(肺炎24、気管支炎20)との間には、肺炎の有無にかかわらず入院時のCRP、入院後有熱日数、入院日数に有意差は認められなかった。

     改訂パスでは、基礎疾患がなく、呼吸管理を必要としない症例では、全例抗生剤非投与を原則とし、抗生剤追加投与が必要な症例をバリアンスとして扱い、その分析から抗生剤投与の適応基準を明確にしていくつもりである。

     パスの導入により共通したベースラインでの比較検討が可能となる。パスの中に工夫を凝らし、さらなるエビデンスが得られるようにしていきたいと考えている。

  • 今野 孝彦, 溝口 節子, 田嶋 千代恵, 伊藤 元博
    原稿種別: 原著
    2003 年 5 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     医療の分野では、医療の均質化を目的にクリニカルパス(パス)の導入が盛んに行われている。一方、多職種が参加するケアの分野では特にケアの均質化によるチームケアの充実が必要である。筆者らは継続的ニーズの評価、ケアの均質化、チームケアの確立,業務の簡略化を目的に在宅ケアのパスを作成した。最初に、介護保険で共通に用いられているサービス利用票を利用し、サービス内容に共通語を用いサービス内容の具体化を行い次にサービス内容に沿った記録をサービス内容票と連動させ、記録の簡略化を計った。

     最終的に作成されたパスは、縦軸に必要なサービスを選択するのに行われたアセスメントのニーズ、選択されたニーズに対する必要なサービスの種類、サービス内容および提供する事業所からなり、横軸に1週間ごとの評価とバリアンスからなっている。

     アセスメントから在宅ケアのパス、サービス内容票およびサービス内容票に連動した記録の一連の流れで、利用者へのサービス内容や各職種間の役割や責任が明確になり、また、ニーズの継続的評価と記録の簡略化による業務の短縮が可能になった。

  • 井川 澄人, 福田 隆
    原稿種別: 原著
    2003 年 5 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     紙媒体でのクリニカルパス(以下パス)の運用にあたっての課題であったバリアンス登録、集計について、電子カルテと統合することにより解決することができた。全ての職種が行為をパス表に全て登録しておき、共通画面と院内統一のフォーマットとした。内容を修正しようとすれば、バリアンスの登録が必須となるように設計した。

     バリアンス項目は、今後の集計作業をリアルタイムに行えるように、パスに影響するのかどうかの大分類、職員等の要因分類としての中分類、その内容に関する小分類、内容の詳細な項目の詳細分類と4階層に分類し、これらを全てコード化した。これらの中には正・負の分類に関しても網羅した。検査の予約もパス表から可能であり、電子カルテへの記録もパス表より可能になり、看護記録はパス毎に登録されたフローチャートでの記載で済むようになった。バリアンス発生時のみ、看護記録はPOS方式の記載を行うようになった。

     実施入力も各種実施入力画面との連動、整合性の確保により、患者を中心としたチームでの情報共有も確立された。適応患者のパス表では、バリアンス登録がなされると、画面の色調が変化し、リアルタイムにコードの参照ができるようになった。

  • 佐手 達男, 庄司 豊彦, 伊澤 一彦, 冬賀 秀一, 加藤 文雄, 古澤 達也, 林 弘道
    原稿種別: 原著
    2003 年 5 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     整形外科では、術後のリハビリテーションが不可欠であり、これを「術後後療法」と呼んでいる。多くの施設では、特定の術式に対する後療法が確立しているために、クリニカルパスが導入しやすい理由にもなっている。人工股関節全置換術(以下THR)は、変形性股関節症や関節リウマチなどに行われている整形外科の一般的な手術である。大腿骨頚部骨折における大腿骨人工骨頭置換術(この場合は大腿側のみの置換)の平均年齢と比較するとTHRは10歳程度若い人が対象である。このためにTHR患者では手術に対する理解度や意欲が大腿骨人工骨頭置換術患者よりも高く、後療法からの逸脱も生じにくい。

     われわれの3施設で行ってきたTHRは過去30年で1200症例を超えた。最近では使用するセメントレス人工関節も改良されているので、従来の後療法を短縮する目的で過去3年のTHR初回手術189例を分析することになった。その際にクリニカルパスの改訂での手法を用いた。その結果、入院期間に最も影響を与えたのは手術から全荷重までの日数であり、術後後療法を6週から4週に短縮することにより、入院期間の短縮も可能と考えられた。4週になった後療法からそれぞれの施設で、クリニカルパスを作成することになった。

  • 斎藤 純, 内田 陽子, 鈴木 まり子, 大沼 優美, 石川 雅子
    原稿種別: 原著
    2003 年 5 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、人工膝関節全置換術(以後TKAとする)を受ける患者及びケアを提供する医療者側双方に効果、効率的であるクリティカルパス(以後パスとする)を開発し評価を行うことである。1996年12月~1997年12月までにパスを使用せずTKAを受けた患者51名をコントロール群、2000年7月~2002年7月までにパスを使用しTKAを受けた患者50名を実施群と設定し、在院日数の短縮やリハビリ開始までの日数、患者アウトカムの指標とし比較評価した。また、TKAパスのアウトカム指標の妥当性を検討する為に、ケア実施率と共に患者側と医療者側の評価の差を分析した。

     その結果以下の知見が得られた。

     1.パスを使用する事で在院日数が短縮した。

     2.リハビリの進行は、パスを導入する事で「端座位」「車椅子乗車」「平行棒内歩行」が早期に開始できた。

     3.患者アウトカムは、100%に近いアウトカムを得る事ができた。特に「膝の屈曲が100度以上できる」のアウトカムが高かった。また、看護師と患者のアウトカム評価に差が無かったことにより両者共に効果がもたらされた。

実践報告
  • 若松 弘一, 宗本 義則, 斉藤 友護, 梶山 浩之, 高橋 薫, 高田 英二, 土橋 佐百合, 笠原 善郎
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     パス大会とは各担当部署が作成・運用しているパスに対しあらためて病院全体の職員がその内容につ いて討論する会のことである。

     パス大会の意義については以下のようなものがある。1.チーム医療と医療の標準化をさらに高度なレベルにあげる。2.職員へ知識を広める場を提供している。3.各科あるいは各病棟単位のチーム医療から病院全体のチーム医療に発展させる。

     パス大会を有意義なものにするために、我々は以下のような工夫をして運営している。1.大会は2 か月に1回開催し約70分かけるが、約5分間で前回パスの改善点を述べてもらい、約55分間でパス1題を検討し、約10分間でその他の話題を発表してもらう。2.担当部署の代表者7~8人は前にならんでもらい一言しゃべってもらう。3.会場からの発言は医師以外からは少ないため、看護部門とその他のコメディカル部門から代表のひとりずつに質問を義務付ける。4.ビデオで記録する。5.終了後には質疑応答の内容を提出してもらう、などである。出席者は約200人でその資料も準備している。他院からのゲストの出席も受け入れている。問題点は出席する人が固定している傾向にあることである。実際に大会を行って一番役立っていることは、大会での議論の内容がEBMへのきっかけになっていることである。

     医療は進歩していくものであり、今後もより良い医療を追求するための場をパス大会は提供し続けると考えられる。

  • 飯田 さよみ, 藤井 宏, 正田 英雄, 萩原 慎, 伊藤 裕進, 藤崎 公達, 池田 弘和
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 63-65
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     糖尿病クリニカルパス導入後3年間の糖尿病治療成績、平均在院日数を導入前と比較検討した。導入後3年間をe-パス(クリニカルパスに計画している依頼項目をオーダリングシステムに組み込んだもの)活用前後(前半期、後半期)に分けて検討した。いずれも重症合併症を伴わない糖尿病入院患者を対象としている。血糖コントロールの指標としてHbAlcを用いた。パス導入前に比較して、導入後前半後半期ともに退院6ヶ月後の患者のHbAlcは統計学的に有意に約1%低下していた。一方、在院日数もパス導入前に比較して導入後前半後半期ともにほぼ6日間の短縮を認めた。後半期の臨床成果はe-パス活用前である前半期とほぼ同程度であったが、e-パス活用により業務の効率化が図られた。パス導入後3年間の検討により、導入前に比較して良い治療成績がコンスタントに維持されることが明らかとなった。糖尿病e-パスの実践成果として、便宜性と医療安全性の高揚があげられると思う。臨床成果向上と医療の効率化の両立を糖尿病e-パスは提供したと考える。

  • ―プログラムの変更とリハビリ記録導入を評価して―
    庄子 孝子, 森 武人, 渡辺 美由紀, 早坂 順子, 大山 昭子, 柴田 裕実, 藤原 聡美, 山田 登, 佐野 徳久
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院整形外科では、年間、人工股関節全置換術を約50例行っている。今回は、在院日数の短縮・理学療法によるリハビリ訓練の進行度と病棟でのADL拡大のずれを解決すること、患者指導の充実を改訂の目標とした。

     対象は、手術前に歩行可能で、骨移植をしないTHAを受ける患者様とした。2回目の見直し(H13.12月~5月)の14例と、3回目の見直し(H14.6月~7月)の10例とした。分析方法は、2回目の見直しをA群、3回目の見直しをB群とし、術後の在院日数、車椅子移動日、T字杖獲得時期、階段昇降の有無のそれぞれを比較した。また、今回新たにに参加したOTの日常生活動作の自立時期とバリアンス、リハビリの記録を入れた事による病棟の看護師、医師の意見とリハビリスタッフの意見とを聴取し評価した。結果は、A群では、平均年齢が61.8歳、車椅子移動日4.9日、T字杖獲得時期27.3日、術後在院日数平均37.9日であった。B群では、平均年齢が64.6歳、車椅子移動日3日、T字杖獲得時期16日目、術後在院日数平均25.7日であった。

     80%の患者様が、杖歩行で予定通り退院する事が出来た。見直し後のパスは、医師・看護師・PT・栄養士・薬剤師のほかにOTが加わり、多くの職種が協力して患者に関わるようになった。パスはチーム医療を推進する手段であり、チーム医療を強固なものとすることを確信した。

  • 勝尾 信一, 吹矢 三恵子, 吉江 由加里, 角谷 文恵, 酒井 さおり, 片山 昌隆
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 75-83
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院ではパス導入時より全科統一フォーマットのオールインワンパスを使用してきた。その適応を拡大するためにいくつかの工夫を行ってきたので紹介する。フェーズ別パスは重要な中間アウトカム(移行条件)を設定し、その移行条件を達成すれば次のフェーズへ移行するものである。蜂窩織炎・脳梗塞急性期といった一定の治療経過はたどるが日数設定が困難な疾患が適応となる。アルゴリズムパスは治療方針を標準化したアルゴリズムを作成し、それに合わせた短期パスを組み合わせて使用するものである。腰痛坐骨神経痛・頚椎症性神経根症といった患者状態によって治療方針が変更する疾患や各種検査の行われる診断パスが適応となる。プチパスは入院している原因疾患や合併症に対して行われる、ある種の検査または治療に用いられるA5サイズのパスである。血管造影・脊髄腔造影・内視鏡的胃痩造設術といった指示や処置・観察項目の多い検査や治療行為が適応となる。手術室パスは麻酔別にケア内容を標準化し、患者状態・確認項目・コスト請求欄・申し送り欄を1枚にしたものである。これはパスの適応拡大の工夫ではないが、入院から退院まで同じ形式の用紙で経過することになり大変見やすくなったのでここで紹介する。

  • ―予防的抗菌薬投与について―
    前島 和俊, 丸岡 博信, 須田 景子, 茂木 英子, 大竹 貫一, 金子 心学, 横沢 郁代, 池谷 俊郎
    原稿種別: その他
    2003 年 5 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     前橋赤十字病院では医療の質の向上と効率化を目的としてクリニカルパス(以下パス)活動を推進しており、2001年9月には100を超えるパスが作成・運用されている。これらのパスのうち、手術または侵襲を伴う検査に作成された84のパスで感染予防を目的として抗菌薬が投与されていた。そこで薬剤部は抗菌薬の予防投与について検討し、43のパスでガイドライン等に示されている抗菌薬の選択、投与法の基準との乖離をパス大会で指摘した。また文献と当院の細菌検査で得られた抗菌薬のMICを根拠に感染対象微生物を想定し、手術を汚染度別に分け、それぞれに適切な抗菌薬を推奨した。その結果19のパスで使用される抗菌薬、投与日数、投与開始時期が変更された。変更されたパスから成人鼠径ヘルニア根治術と人工膝・股関節置換術を選び、手術部位感染(surgical site infection, SSI)について検証した。

     成人鼠径ヘルニア根治術では、抗菌剤が第2・第3世代セフェム剤から第1世代セフェム剤に変更された。また人工膝・股関節置換術では、経静脈的およびその後の内服薬投与期間が短縮され、投与開始時期も術直前に変更された。これらのパスの変更前後について検討した各々91例、68例で手術部位感染は認められず、感染徴候でも有意な変化はなかった。

     エビデンスに基づいた薬剤部の提言により、抗菌薬が適正に使用されたものと考える。

  • ―院内統一書式への作業―
    玉川 英史, 篠崎 浩治, 倉持 宏明, 落合 新二, 小林 阿由美, 菊池 俊子, 大塚 秋二郎
    原稿種別: その他
    2003 年 5 巻 1 号 p. 91-97
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     一週間程度の入院で加療可能な疾患に対して観察記録組み込み型Over Viewパスを、また、局所麻酔や腰椎麻酔で行う治療については、さらに手技(麻酔下処置)の間の記録も組み込んだ手技・観察記録組み込み型Over Viewパスを考案した。そして、それを日めくり形式のパスと2本立てで院内普及・書式統一作業を行なっている。今回は、観察記録組み込み式のOver Viewパスを紹介する。パス院内書式の統一化を目指し観察項目の分類、コード化、表現の統一を行い、運用上の利便性を考えてパス紙面での記載方法の工夫、視認性の向上、中間目標の取込みを行った。具体的には、観察項目の樹枝式分類とコード化、それぞれの項目について表現の統一化を行った。表現には『有る・無し』の他に、数字やアルファベットによるグレーディングを採用した。簡便性のため、記載には二者択一かマルチプルチョイス形式を用いた。またカラー紙面を導入し、選択肢を色分けする事により中間目標を記入欄に組み込み、常にアウトカムを指向したパスを目指した。これにより、記載者側もバリアンス発生を意識しながら観察する事ができ、さらに前述した如く、観察項目がコード化されているためパリアンス発生時もコードで記載する事が可能となった。以上の様なOver View型パスに導入した工夫を紹介する。

  • 松田 眞佐男
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     医療の質向上と業務の効率化を目的に、クリニカルパス形式の統一と診療記録様式の改編を併せ行うことにより、診療記録全体の統合と改善をはかった。

     クリニカルパスの標準形式を日めくり式の見開き形式とし、左ページに指示項目、右ページに観察項目を集約し、各指示項目には医師・看護師のサインを完備することで、診療記録としての機能を持たせた。クリニカルパスは全てその診療内容と形式を検討した後、認定パスとすることとした。複写式のバリアンス記録用紙を配布し、疾患ごとのバリアンス・ファイルを作成のうえ、これを院内LAN(Local-Area Network)で集計するシステムも完備した。

     一般診療記録様式も改編においてはPOS方式(Problem-Oriented System)の導入を柱とし、各職種の記録範囲を明確にして重複記載や転記を廃し、全ての診療記録を集約して情報の共有化をはかることを理念とした。また、医師による「問題リスト」の記載はチーム医療の基幹をなすものであり、これを重視することとした。

     クリニカルパスと一般診療記録において、その形式を統一し、同一理念で記載を行うことが、医療の質向上、業務の効率化およびチーム医療の推進に重要と考える。

  • 古田 美穂子, 尾野 洋子, 河野 律子, 原 寿美子, 藤井 誠, 安藤 正昭
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     当院では1ヶ月間に約15例の大腸ポリペクトミー(以下ポリペク)を行い、3日間のクリニカルパス(以下パス)を使用している。パス作成以前の、ポリペク入院時の必要書類は、短期間の入院にもかかわらず看護部だけでも5種類(1.入院時情報、2.看護記録、3.体温表、4.看護計画立案、5.検査前処置マニュアル)が必要で多くの時間を費やしていた。

     1998年には記録の短縮化として入院時情報の簡素化を行ない、1999年にポリペクのパスを作成し、上記の1~5項目をパスに組み込み、数回改訂をおこない使用した。

     2002年6月には、入院時情報から目標、アウトカム、バリアンス、さらに看護記録、退院指導までの経過が一体化されたものに改訂した。また退院療養計画書も基準を作り使用した。

     パスと記録の一体化によって記録の効率化と、入院時情報収集に患者1人あたり約10分の時間短縮ができた。また時間短縮することで患者サービスの低下が懸念されたが、患者アンケート結果ではサービスの低下はみられなかった。

  • 豊田 暢彦, 岩本 明美, 熊谷 佑介, 栗栖 泰郎, 岩永 幸夫, 東 初美, 長谷川 美加
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 111-119
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     近年、わが国においてもクリニカルパス(以下、パスと略す)の導入が急速に進んでおり、当院でも平成11年よりパスの導入に取り組んできた。今回我々は幽門側胃切除術に対するパスの導入が外科病棟にもたらした効果につき検証したので報告する。当院では平成11年4月よりパスの導入に取り組み、パス導入プロジェクトチーム発足後、12月にはパス運営委員会を設置し、「作ってみよう、使ってみよう」を合い言葉に活動を始めた。外科では医師と看護師が協力して1疾患に対して医師、看護師がそれぞれ1名の割り当てで分担し作成した。当科のパスの特徴として職員用は診療録と同じA4サイズを用い、チェックリスト形式とし、患者用はA3サイズを使用し、大きな文字で平易な文章で表現し、多くのカラーイラストを取り入れ、理解しやすいように考慮した。パス導入の効果として医療の標準化と効率化が図られたことはいうまでもなく、在院日数、経済効果の点でもパスの効果が認められた。しかし、パス導入が外科病棟にもたらした最大の効果はチーム医療の見直し、推進であったと思われる。これまでとかく医師から看護師への一方的になりがちであった診療体制がパスを共同で作成し、活用するという課程を通して、医師・看護師間での連携が図られ、チーム医療というものを再認識できた。これらはすべてパス導入による目には見えない二次的効果といえる。

  • ―アンケート調査からの評価―
    治田 美津子
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     乳癌のクリニカルパス(以下CP)は、平成11年9月に作成し使用を開始した。以後1年毎にバリアンスを収集・分析し検討会において評価・修正を行った。今回は、現在のCPが患者様に受け入れられているのか、さらに患者様に分かり易いCP作成を目的に、1)日常生活動作8項目、2)CPが理解できたか・良かったか・CP通り進んだか、3)手術前後のつらかったこと、支えてくれた人、4)自由記述、を術後患者からアンケート調査によって情報収集した。対象は、平成11年9月22日~平成14年5月13日までに乳癌手術を受けた患者様36名である。アンケート回収率は82%であった。1)日常生活動作に関しては、関節の可動域が関連しており、段階をおった早期のリハビリが重要であると考えられた。2)CPに対する満足度については高い評価を得られた。3)手術前後において最もつらかった事は、温存群では病名・痛みが、切除群では乳房がなくなることと検査結果、であった。支えてくれた人は両群共、配偶者であった。4)自由記述においては、患者は手術前から、この先どうなるのか、どうずればよくなるのかを考えて過ごすことが理解できた。今回の患者様の声は、退院後にアンケート調査を行ったことで聞くことができ、今後のCP修正に大きな課題となった。

  • 三好 朗子, 高橋 周史, 大志万 芽久美, 辻井 泰子, 青木 敏行, 立木 三千代
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

     患者背景が多彩な出血性潰瘍パスの作成にあたり、個別性へも配慮できるパスが必要と考え、通常のパス表と見開きになる形でワークシート形式を採用した。ワークシートの左半分には、各部門の指導・説明内容を箇条書きにし、それに対する成果は客観評価できるようにチェック方式で記入できるようにした。右半分はフリースペースとして、すべての部門のスタッフがそれぞれの立場で得た患者情報を自由に記載できるようにした。これにより、各部門の業務内容がチーム全体で理解し合え、また患者情報の共有化が図れ、患者の個別性にも配慮しやすくなった。また、ワークシート上で各部門間でコミュニケーションも行なわれるようになりチーム医療の推進にも有用と考えられた。今回作成したワークシートを利用した形式のパスは、対象疾患が個別性への配慮の必要性が高い場合に有用と考えられた。また、まだチーム医療が定着していない施設におけるチーム医療の推進をもたらすツールとしても有用と考えられた。

  • 山中 麻由香, 田中 由香, 浅野 裕子, 大西 由美子, 長塩 眞美
    原稿種別: 実践報告
    2003 年 5 巻 1 号 p. 131-137
    発行日: 2003/07/25
    公開日: 2024/03/28
    ジャーナル フリー

    【目的】クリニカルパスが導入され、冠動脈バイパス術の術前日数が2~3日と短縮した。本研究は簡潔、かつ統一的な記載が可能となるよう術前サマリーを見直し、継続ケアに必要な情報提供ができているか検討したものである。

    【方法】1.病棟・手術室・集中治療室の看護師80名に対し、現在使用している転棟サマリーの問題点を把握分析するためアンケートと聞き取り調査を行った。その結果をもとに看護計画と転棟サマリーで問題点を簡潔に記載できるよう分類し記載した。5ヶ月後同看護師に対し改良点を評価する為、再度アンケート調査を実施した。2.改良後、患者50名に病棟が替わっても継続したケアが行われたかアンケートと聞き取り調査を行った。

    【結果】97%の看護師が、転棟サマリーは問題点が分かりやすいと回答し、患者からも「病棟が替わっても継続した看護がしてもらえた。」と評価を得た。

    【結論】転棟サマリーを簡潔、かつ統一的な記載方法に改良することで病棟が替わっても継続的な看護が可能となる。また、記載方法を統一することで効率化が図れる。

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