出血性胃十二指腸潰瘍に対する各種内視鏡的止血術や薬物療法の有用性に関してはコンセンサスが得られているが、食事療法は明確なエビデンスがないまま慣例的な方法が行なわれているのが現状である。そこで、個々の症例の臨床経過に応じた治療経路を選択できるように設計されたアルゴリズムを取り入れた出血性潰瘍クリニカルパス(以下パス)を用いて、慣例的な食事療法の是非を検証することにした。絶食期間については、パスを用いた64症例中、絶食が慣例的な3日間であった標準絶食群は27例(42.2%)であったのに対して、2日以内の短期絶食群は36例(56.3%)あり、両群の臨床成績には差がなかった。食事内容については、慣例的に流動食から順次常食に戻された順次群は35例(54.7%)、絶食後五分粥食から始められた非順次群は29例(45.3%)であった。再出血、手術、死亡例などの臨床成績では両群に有意差はなかったが、入院期間は非順次群で有意に短縮していた。これらの結果より、慣例的な3日間の絶食や、流動食から順次常食に戻す食事療法の必要のない症例が多いことがわかるとともに、現行のパスの有用性が示された。今後、症例を重ねて絶食期間を短縮できる症例、慣例的な食事療法を行なわなくてもよい症例の評価基準をより客観性のあるものにしていく必要がある。