2005 年 7 巻 2 号 p. 81-87
災害や事故が多発し、多数傷病者発生への対応が重要視されている。初療体制立ち上げのためには救急専従医以外のマンパワーが不可欠であるが、外傷診療になじみのあるスタッフは少数であるのが現状である。そこで非救急専従医による外傷患者対応の垣根を低くするために外傷初期診療ガイドラインJATECTM(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)を参考に集団災害時外来診療パスを作成した。JATECTMでは負傷部位局所に目を奪われるあまり致死的な徴候を見落とさない系統的診療を最も重要視している。当パスではガイドラインに準じてまず生理学的徴候を優先したprimay ABC(Airway気道,Breathing呼吸,Circulation循環)アプローチを見落としなく行った上で異常があれば直ちに重症エリアに再トリアージし、異常がなければ解剖学的異常の検索(secondary survey)に移る簡素化したチェックリスト形式とした。当院開催の災害訓練時に1次トリアージされた後の各救護エリアで実際に使用してパスの検証を行った。訓練に先立って全職員に講義形式で教育する際にも使用した。救急専従医の人数は限られ軽症、中等症エリアには配置する余裕がない設定とした。非救急専従医によっても軽症~中等症エリアにアンダートリアージされた重症者の拾い上げが行えた。集団災害時外来診療パスの作成とこれを用いた教育は限られた人的リソースの有効利用に極めて有用であった。