2006 年 8 巻 1 号 p. 35-38
【目的】当院では2003年5月より恥骨後式前立腺全摘除術(以下RRP)のクリニカルパス(以下CP)を使用している。本研究の目的はCP導入による在院日数短縮効果を検討することである。【対象・方法】CP導入以後にRRPを施行した患者33名(平均67.6歳)を対象とし、ドレーン抜去、創傷治癒(全抜鈎)、尿道カテーテル抜去、術後在院日数に関するアウトカム分析を行った。また、各項目に関して2001年1月から2003年4月のCP導入以前にRRPを施行した患者20例(平均66.4歳)との比較を行った。当院使用のRRP用CPは術後2日目にドレーン抜去、7日目に抜鈎、8日目に尿道カテーテル抜去、9日目に退院するというものである。原則として術前貯血式自己血輸血(1200ml)を用いている。【結果】術後平均在院日数14.4日で、CP導入前が15.0日、導入後が14.0日と統計学的有意差を認めなかった。アウトカム分析ではドレーン抜去、全抜鈎、尿道カテーテル抜去の達成率が各々67%、76%、73%であったのに対して退院の達成率は27%と低かった。術後経過が順調であったのにもかかわらず退院が達成できなかった患者の33%が退院予定日に創痛を訴えており、38%で総尿量の70%以上の失禁が認められた。【考案】術後経過が順調でドレーン抜去・抜鈎・尿道カテーテル抜去がCPの規定どおりに達成されているにもかかわらず、退院が達成できない原因として創痛・尿失禁が示唆された。術後の創痛や尿失禁に関するインフォームド・コンセントや術後早期の尿禁制改善のための工夫を強化することで、今後さらに在院日数を短縮できる可能性がある。