日本クリニカルパス学会誌
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総説
医療の質評価とクリニカルパス
―すべては医療の質の向上のために―
岩﨑 榮
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2006 年 8 巻 2 号 p. 101-107

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抄録

 病院が提供している医療の質を評価しているとする病院機能評価(以下機能評価という)であれ、クリニカルパス(以下パスという)であれ、その目指すものは医療の質改善・向上であることに変わりはない。

 質向上のためには、現在の業務のやり方を改善すればよいことはわかっている。さて、改善をどのように進めていけばよいのであろうか。改善のためには目標や標準化をはかることが必要である。こと現代医療の場でもはや医師1人でやれるものは何1つとしてない。チーム医療が必要である。そこで組織的に組織を挙げて改善を進めていくことが求められる。これまでも、TQM(Total Quality Management)、TQC(Total Quality Control)、QMS(Quality Management System)の概念が病院の医療の質向上のために導入されてきた経緯がある。

 これらは残念ながら表層的な導入に過ぎなかったともいわれている。

 病院が機能評価を受けることも最近では「認定」を得ることだけが目的となっているという批判もある。本当は病院が機能評価を受けることで病院の医療の質改善・向上について討議され考えることで、結果として、その病院が提供する医療の質が改善し向上すればよいわけである。

 一方、パスにしても、ただ単に在院日数の短縮化や効率性のみを追求するのではなく、病院マネジメントの1つのツールとして、自院においてパスの1つ1つを作る過程でチーム医療、患者中心の医療、情報の共有化、医療の標準化が達成されていくことで病院マネジメントに変革がもたらされればよいことである。

 機能評価項目4.1.5.1、4.2.6.3ではパスが求められ、バリアンス分析がなされているかどうかでその項目が評価される。しかしこれらの項目が達成できたから医療の質改善に寄与したかどうかのエビデンスは必ずしもない。最近、「患者状態適応型パス」(飯塚悦功ら)が提唱され、厚労省の来年度の「医療保険制度体系に関する改革」の中でも「医療連携パス」が重視される施策が示されている。

 機能評価、パスいずれも、我が国における医療の質向上に寄与していることは間違いない。今後は具体的なエビデンスを示していくことが課題となる。

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© 2006 一般社団法人日本クリニカルパス学会
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