抄録
Noonan症候群は特異的顔貌,先天性心疾患,骨格異常などを主症状とする常染色体優性遺伝疾患である.新生児期の哺乳障害や乳幼児期の摂食困難が認められるが摂食嚥下機能の経過についての報告は少ない.今回,長期にわたって摂食機能療法を行った症例を経験したので報告する.
症例:初診時(3歳2カ月),指しゃぶりは可能であったが,スプーンやペースト食に対する拒否がみられたことから,経口摂取への拒否を伴う経口摂取準備不全と診断した.指にだし汁などをつけて下唇にぬり,味に刺激されて分泌した唾液を嚥下する味覚刺激訓練と,玩具などによる口腔内への触刺激を行うこととした.
経過:水分の受け入れがよかったことから,水分を中心に徐々にペースト状を試していった.4歳5カ月で捕食機能,5歳6カ月で押しつぶし機能を獲得したが,6歳過ぎから介助を嫌がり自食を行うことで捕食ができなくなった.8歳2カ月頃から介助や軟固形の食物形態の受け入れが可能となり,8歳6カ月で捕食機能の再獲得,9歳5カ月で前歯咬断が可能となった.現在,咀嚼訓練で咀嚼機能の獲得を目指している.
考察:感覚偏倚やこだわりのある本症例に対し,無理強いすることなく,本人の受け入れやすい食物形態を提供することが重要と思われた.発達障害の特性に起因すると思われる介助や直接訓練に対する拒否に対して,療育や教育による小児の精神面・社会性の発達を考慮し,適切な時期に摂食機能療法が行えるよう,継続した食支援が必要と思われた.