抄録
当センターは市民の歯科保健の向上を目的として昭和57年に開設され,休日・夜間救急の急性期医療の受け皿としての機能から,一般歯科診療所を補完する訪問歯科診療および障害者歯科診療の高次受け入れ医療機関へと重点が推移してきた.特に障害者診療部門では,日帰り全身麻酔などの麻酔管理体制を整備した専門性の高い二次医療機関を目指し,平成21年にセンターの再構築を実行した.センター再構築後5年間の患者動向を分析し,現在の当センターの機能と今後の課題を明らかにするなかで,地域包括ケアシステムにおける口腔保健センターの役割を検討した.
患者背景分析の結果,受診患者の大半が比較的若年層で,自宅から公共交通機関を利用して家族の付き添いにより通院が可能な発達障害患者が占めていた.他の医療機関で治療困難であった患者が多く,地域の障害者歯科医療を支援する高次医療機関としての機能は果たしていることが示唆された.その一方で,壮年期の知的障害患者や重度重複障害患者の受診が少ないこと,今後の高齢患者の増加への対策が課題として挙げられた.この根底には,歯科治療を必要とする患者の情報が不十分で福祉関連職種との連携体制がとれていないという問題があった.センターは,支援を必要とする患者の情報を広く収集・発信し,福祉との連携を図る機能が必要であり,そのためにも今後ますます訪問診療部門との連携の強化が重要であると考えられた.