日本障害者歯科学会雑誌
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原著
経管栄養の要介護者にみられる咽頭付着物の形成要因
篠塚 功一小笠原 正岩崎 仁史磯野 員達轟 かほる岡田 芳幸蓜島 弘之沈 發智嶋田 勝光落合 隆永長谷川 博雅柿木 保明
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2016 年 37 巻 1 号 p. 22-27

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抄録

摂食嚥下障害のある患者に対する嚥下内視鏡検査の実施時に咽頭に付着物を観察することがある.咽頭の付着物は,摂食嚥下機能障害や窒息のリスクをきたす可能性がある.咽頭付着物の形成機序や関連要因については,明らかにされていない.本研究は,咽頭付着物の形成要因を明らかにするために検討した.
施設入所中の要介護者のうち経管栄養の27名(81.1±9.3歳)を調査対象とした.年齢,性別,疾患,寝たきり度,意識レベル,意思疎通の有無,発語の可否,介助歯磨きの頻度などを調査した.唾液湿潤度,口腔内の剝離上皮膜の有無,舌の動きの可否,開口・閉口を評価した.咽頭の付着物は,内視鏡にて確認した後,咽頭の付着物をピンセットあるいは吸引チューブで採取した.採取した口腔の剝離上皮膜と咽頭の付着物をHE染色し,重層扁平上皮由来の角質変性物が認められたものを咽頭の付着物とし,項目間の関連性をχ2検定,さらに決定木分析にて咽頭付着物の形成要因を検討した.
咽頭付着物の形成要因として抽出されたのは,12項目中1項目のみで口腔の剝離上皮膜の有無であった.口腔の剝離上皮膜を除去した後,口腔内へ保湿剤を噴霧することで咽頭の剝離上皮膜が減少するという報告がある.口腔の剝離上皮膜がみられるものは,咽頭の付着物を形成している可能性があり,口腔の剝離上皮膜の形成予防が咽頭の付着物の形成予防につながる可能性が示唆された.

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© 2016 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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