日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
6カ月ごとの全身麻酔下排尿管理時に歯周治療を実施した二分脊椎症患者の一例
永井 悠介松本 重清
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2016 年 37 巻 1 号 p. 28-34

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抄録

二分脊椎症は,母体内においてなんらかの理由で胎児の脊椎骨が形成不全となって起こる先天性神経管閉鎖障害の一つである.症状は症例によりさまざまで,膀胱および直腸障害による排泄障害,水頭症などがみられる.
今回,当院にて6カ月ごとに全身麻酔下での排尿管理を必要とする二分脊椎症患者に対して,全身麻酔下での処置の際に歯周治療を実施した症例について報告する.
患者は33歳男性.二分脊椎からの神経因性膀胱に起因する腎不全に対して,右腎瘻,左尿管カテーテル,膀胱瘻が留置されている.精神遅滞を有し,意思疎通が不可能なことから当院泌尿器科入院下に6カ月ごとに全身麻酔下に尿管カテーテルの交換が行われている.
口腔管理は他院にて行われていたが,外来診療下では十分な処置が行えず,口腔内に多量の歯石を認めたため,全身麻酔下での除石を目的に2014年4月に当院歯科口腔外科紹介となった.以降,患者の母親の希望もあり,現在まで合計4回,全身麻酔下での尿管カテーテル交換の際,同時に歯周基本治療を行った.
知的障害者に対する全身麻酔下での定期的なメンテナンスの有用性が報告されており,全身疾患による生命維持のための定期的な全身麻酔下処置が必要な患者では,同時に歯科処置を行うことは有用であると考えられるが,患者の保護者,他科医師および看護師など関係者の理解と協力,連携が必要不可欠である.

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© 2016 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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