抄録
むちゃ食い障害を併発した2型糖尿病女性の大半が,肥満,高脂血症,高血糖などの問題を抱え,メタボリックシンドロームの診断基準を満たしている.精神疾患を併存することも多い.糖尿病コントロールの改善が必要であるが,困難であることが少なくない.深い心理的な問題を抱えていることが多いため,人生や糖尿病に関する苦痛に満ちた感情を受容するなど,心理的側面に焦点を当てた治療が欠かせない.1例の治療経過をここに提示した.糖尿病治療を遵守しようと思えるだけの人生の意味をもつことのできなかった患者の哀しみに共感し,人生の意味を回復するための「喪の作業」「悲哀の仕事」に寄り添う過程が,これらの患者の治療において重要な役割を演じると思われる.