日本障害者歯科学会雑誌
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原著
重症心身障害児の保護者による在宅での口腔ケアにおける清拭の有効性
髙井 理人大島 昇平中村 光一八若 保孝
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2018 年 39 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

重症心身障害児(以下,重症児)の保護者が在宅で行う口腔ケアについて,保護者による清拭の有効性と,唾液中細菌数に影響を与える因子について検討した.

人工呼吸器および経管栄養を使用する15歳未満の重症児20名(平均年齢5.5±3.8歳)を対象とし,自宅訪問中に保護者による口腔ケア(2分間のブラッシングとガーゼによる清拭)を行わせ,ブラッシング前,ブラッシング後,清拭後の唾液中細菌数を測定した.唾液は口底部から採取し,測定には細菌カウンタ®(パナソニックヘルスケア,東京)を用いた.普段からブラッシング中の吸引を行っている者には吸引を行わせた.また,全身状態(栄養方法,人工呼吸器の使用状況,気管切開の有無,持続吸引の有無,嚥下の有無)とブラッシング前の唾液中細菌数との関連を単変量解析と重回帰分析により検討した.

唾液中細菌数はブラッシング前,ブラッシング後と比較して清拭後では有意に減少した.ブラッシング中の吸引の有無とブラッシング前後の唾液中細菌数の変化には有意な関連を認めなかった.単変量解析では,人工呼吸器の使用状況,気管切開の有無,嚥下の有無において唾液中細菌数の有意差を認め,重回帰分析では,嚥下の有無のみを独立変数とする有意な回帰式が得られた.

ブラッシング後の清拭は唾液中細菌数の減少に有効であった.嚥下を認めない重症児では唾液中細菌数が多く,清拭の意義は大きいと考えられた.

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