2018 年 39 巻 1 号 p. 8-15
障害者差別解消法が施行された現在,障害者歯科医療を行うにあたり,合理的配慮を可能なかぎり提供することが求められるようになった.しかし,意思決定支援を行うためのマニュアルがないのが現状である.本研究の目的は,全身麻酔と身体抑制法を説明したうえで,どちらかを選択できるレディネスを明らかにすることである.
松本歯科大学病院特殊診療科を受診した知的能力障害者90名(知的能力障害24名,自閉スペクトラム症54名,Down症候群12名)に対し,全身麻酔,身体抑制について説明した動画,イラスト,写真のいずれか1つを見せながら口頭で説明を行った.その後,媒体を見せながら5つの質問を行い,理解度を確認した.質問の内容は,①「薬を使うのはどちらですか」,②「寝ているうちに治療が終わるのはどちらですか」,③「抑えられて治療するのはどちらですか」,④「どちらが好きですか」,⑤「どちらが嫌いですか」とした.質問①~③についてすべて正解であった者を理解群,1つでも間違えた者を非理解群とした.
結果は,いずれの媒体であっても基本的習慣と言語理解が4歳6カ月で,全身麻酔と身体抑制が理解できる可能性が示唆された.どちらが好きかという質問に対しては全身麻酔のほうを選ぶ者が多かった.媒体の理解しやすさには明確な差が認められなかった.