本研究の目的は,当センターを受診している障害を有する患者のうち,酸蝕症である患者を対象としてアンケートおよび口腔内所見について調査を行い,その実態を把握することである.また,それを基に酸蝕症の原因,予防法や治療法を検討することである.
明らかに酸蝕症と診断された患者は21名(男性18名,女性3名,平均年齢37.9±5.9歳)で対象者の4.6%であった.障害別では,自閉スペクトラム症が13名(61.9%)で対象者の10.8%,知的能力障害が8名(38.1%)で対象者の3.3%であり,障害の程度は,19名(90.5%)が重度であった.反芻癖は10名(47.6%)に認められた.唾液のpHは平均6.45±0.26であった.充塡物脱離は7名(33.3%),う蝕は6名(28.6%)にみられた.飲み物や食べ物のこだわりは,コーラ,コーヒー,ジュース,柑橘類の順に多く,また,問題行動は17名(81.0%)に認められた.
今回,酸蝕症と診断された患者は,障害別では自閉スペクトラム症や知的能力障害者に認められた.また,反芻癖や問題行動が認められ,コーラやジュースなどの酸性飲料を好む患者が認められたことから,内因性と外因性の原因が考えられた.そのため,原因別に対応する必要があると思われた.