日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
1p36欠失症候群の4例
藤代 千晶村上 旬平松川 綾子財間 達也藤川 順司秋山 茂久
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2018 年 39 巻 4 号 p. 424-431

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抄録

1p36欠失症候群は,1980年にHainらにより報告された1番染色体短腕末端サブテロメア領域の微細欠失に起因し,5,000~10,000出生に1人の発生頻度とされる.特徴的な顔貌(水平な眉毛,落ち窪んだ目,鼻根部扁平,非対称な耳介,尖ったオトガイ),知的能力障害,先天性心疾患,てんかん,口唇口蓋裂と軟口蓋裂などの特徴が報告されているが,歯科領域の報告は少ない.今回われわれは,本症候群の4例を経験した.

症例は,7歳5カ月~21歳2カ月までで,男性1名,女性3名であった.これまで報告された所見以外に,全例で雀卵斑,2/4例で癒合歯,1/4例で乳歯の先天性欠如,3/4例で永久歯の先天性欠如,および3/4例に栓状歯がみられた.これらは本症候群との関連が示唆される.また,全例に歯列や咬合に関する問題(2/4例で叢生,2/4例で開咬)がみられた.しかし,開咬がみられた2例はいずれにも舌突出癖がみられたため,本症候群との関連は不明である.

いずれの患者も,知的能力障害がみられ,セルフケアが困難であった.介助者による口腔ケアとプロフェッショナルケアが不可欠であると考えられる.

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© 2018 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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