日本障害者歯科学会雑誌
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原著
自閉スペクトラム症児のう蝕罹患に関連する因子
大西 智之久木 富美子浜田 尚香金高 洋子藤原 富江田井 ひとみ角谷 久美代畔栁 知恵子前田 有加苦木 優菜村上 真咲樂木 正実
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2019 年 40 巻 4 号 p. 478-484

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抄録

自閉スペクトラム症(Autistic Spectrum Disorder,以下ASD)児は,定型発達児と比較して歯磨きへの適応が困難である,こだわりにより食べる物が制限される,うがいができないためにフッ化物含有の歯磨剤を使用できないなどさまざまな理由によりう蝕予防が困難なことが多い.今回,4~5歳のASD児に対する初診時の口腔内診査と医療面接の結果から,食生活習慣および刷掃習慣に関係する因子とう蝕の有無あるいはう蝕の重症度との関連性について統計学的な検索を行った.その結果,う蝕のない者,軽度う蝕のみを有する者,重度う蝕を有する者の3群間で有意な差を示したのは,間食回数,夕食後の間食の有無,間食の規則性,甘い間食が多いか,こだわりで甘い物を選ぶか,食べ物・飲み物へのこだわりの有無,歯磨きへの協力性,触覚の敏感性の有無であった(Kruskal-Wallis検定).それらの項目を説明変数とした数量化II類の結果,う蝕の有無と関連性が強かったのは間食回数で,う蝕の重症度と関連性が強かったのは歯磨きへの協力性,食べ物・飲み物へのこだわりの有無,間食回数であった.以上の結果から,ASD児のう蝕予防においても定型発達児と同様に間食の管理が重要であるが,歯磨きに協力できなかったり,食べ物や飲み物へのこだわりを有したりする場合は,う蝕が重症化しないようにリコール間隔を短くするなどのサポートが必要であることが示唆された.

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© 2019 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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