障害者の歯科疾患管理を的確に行うことは,障害者の食に関するQOLの維持・増進のために重要である.今回われわれは,15年以上の観察期間を有する患者を対象として,長期の歯科疾患管理が口腔状態に及ぼす影響を評価することを目的とした研究を行った.健全歯数を口腔状態の指標として,調査期間における健全歯減少数の実態と受診内容の影響について,回顧的調査および統計解析を行った.
対象患者は121名で,初診時年齢の中央値は22歳であった.初診時健全歯数の中央値は17歯であった.
15年間の個人受診数の中央値は95回,各対象者の受診のうち,麻酔管理下で処置が行われた割合の中央値は2.3%であった.1年間以上の中断があった対象者は63名(52.1%)であった.健全歯減少数は,中央値が5歯であった.
解析は,健全歯減少数が中央値以上であった群を減少数が多かったとして,多項ロジスティック回帰分析を行った.15年間の健全歯減少数に影響した要因は,受診期間中の中断期間の有無の影響が最も強く,次いで,麻酔管理下受診の割合であった.
この結果は,長期中断がないように診療を行うこと,歯科受診に麻酔管理が必要な者の口腔衛生に特に注意する必要があることを示唆している.
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