抄録
気候変動の緩和、生物多様性保全、地域の人々の生計向上など、森林の役割に対する認識の高まりを受け、大面積の荒廃地を短期間で森林に復元するという国際目標が設定されている。熱帯での森林修復活動は、長きにわたり行われてきたが、従来の森林修復活動は、森林が失われた場所に樹木を植栽すること自体が重視され、失敗に終わったものが多かった。このような失敗を踏まえ、別々の目的をもつ複数の植栽地と他の土地利用をも含めたランドスケープレベルでの取り組み「森林景観復元」が行われるようになった。そして、長期にわたる順応的な管理とガバナンスの改善の必要性が指摘されている。しかしながら熱帯発展途上国の多くでは、人口増、経済開発、国際的な原料需要の増大など、森林破壊要因への対処は、いまだ十分ではない。このようなことから、荒廃地の森林景観復元はガバナンスの改善を含む森林破壊要因への対処がなされているところから始めるべきこと、また大面積森林復元目標に対応するために拙速な植栽活動を行うのは厳に慎むべきことを、提言する。