日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
病診連携により施行できたNoonan症候群患児の心臓手術前の口腔内感染源への歯科治療の一例
山座 治義髙山 扶美子小笠原 貴子廣藤 雄太廣藤 早紀木舩 崇佐藤 綾子香川 由依増田 啓次福本 敏
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2020 年 41 巻 4 号 p. 318-324

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抄録

Noonan症候群は先天性奇形症候群の一つであり,特異顔貌,先天性心疾患,難聴,精神遅滞,低身長などが特徴である.今回,肺動脈狭窄症に対する根治術前に,う蝕治療が必要なNoonan症候群の患児に対し,病診連携により全身麻酔下で歯科治療を行ったので報告する.

患児は3歳10カ月の女児で,かかりつけ歯科を定期的に受診していたが,心疾患の根治術前の歯科治療が必要になった.患児は精神遅滞があり通法下での歯科治療が困難であることから,全身麻酔による行動調整が適応となった.しかし,心疾患を有するハイリスクな全身状態で,全身麻酔前後の全身管理が必要であることから,患児の生後から診察をしていた小児科医より当科に紹介受診となった.

当院の小児科医やかかりつけ小児科医と連携して術前の全身評価を行い,当院小児科に入院後に口腔内感染源除去を目的とした全身麻酔下での歯科治療を行った.術後の口腔内および全身の経過は良好で,術日の翌日に退院となった.

先天性心疾患を有する患者において,う蝕や歯周疾患などの口腔内感染症が感染性心内膜炎のリスクファクターとなりうることから,心疾患への手術前に口腔内の感染源除去は必須である.また,大学病院は三次医療機関として,地域の歯科医院では対応が困難な患者の紹介とその対応も担っており,かかりつけ医師や歯科医師との病診連携が重要である.

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© 2020 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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