日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
障害者歯科治療における患者の意思決定について
―重度知的能力障害者の全身麻酔への意思決定を巡って―
東出 歩美冨田 智子吉岡 恵豊福 里佳吉田 和子吉川 未華西田 ちひろ永谷 美紗希藤田 舞雪藤本 真穂長尾 果歩村上 智哉米沢 篤緒方 克也安岡 良介
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2022 年 43 巻 2 号 p. 137-142

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抄録

独居の重度知的能力障害者における日帰り全身麻酔下歯科治療を経験した.全身麻酔下治療の実施にあたっては患者本人の意思決定が必要であり,今回は,患者本人の意思決定をもって承諾とした.しかし,医療機関の規則で全身麻酔の施行には家族等の同意が必要という課題が残った.また,今後患者本人の意思決定が得られない場合の対応として重度知的能力障害者の意思決定をどう支援できるかの課題も残った.

今回の患者には家庭裁判所より任命された成年後見人がつけられており,財産などの管理が行われていた.しかし成年後見人には,身上監護の内容である医療に対する決定権はなく,そのため全身麻酔を行うことへの良否を成年後見人として承諾することはできなかった.このような場合の意思決定には支援会議が必要とされている.患者の意思決定支援会議は医療側だけでなく,成年後見人,家族や福祉サービス側からの出席が必要であるが,現実には医療に対する情報の一方向性から活発な意見交換は難しいと思われた.

今後は成人障害者患者の意思決定支援について,歯科医療者側の福祉に対する理解と,患者の歯科医療への理解と福祉サービスとの連携のために,これらをコーディネートできるスタッフの育成が必要と考えた.

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© 2022 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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