日本障害者歯科学会雑誌
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原著
一時保護所に保護中の被虐待児童の歯種別う蝕罹患状況に関する報告
野上 有紀子中村 由紀五月女 哲也清川 裕貴朴沢 美生築野 沙絵子笹川 祐輝鈴木 絢子花﨑 美華中島 努大島 邦子齊藤 一誠岩瀬 陽子早﨑 治明
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2023 年 44 巻 1 号 p. 10-18

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抄録

被虐待児童はう蝕が多いとされているが,これまでの報告の多くは,う蝕有病者率やう蝕経験歯数に限られていた.本研究では,被虐待児童におけるう蝕罹患状況の特徴を探索するため,歯種別に解析を行った.歯種別解析の対象は,2~19歳の一時保護所への入所理由が「虐待」の児童(虐待群)323名とした.年齢に応じて,乳歯の解析では2区分(2~5歳,6~9歳),永久歯では3区分(5~9歳,10~14歳,15~19歳)とし,歯科疾患実態調査(対照群)と比較を行った.乳歯,永久歯ともに一人平均未処置歯数は虐待群において有意に高く,永久歯においては一人平均う歯数がすべての年齢区分で虐待群が有意に高かった.歯種別に解析した結果,乳歯では上顎左側乳中切歯と上顎右側乳犬歯,永久歯では第一大臼歯と第二大臼歯において,虐待群が有意にう歯保有者率が高かったが,虐待群の歯種別う蝕罹患状況として明確な特徴と判断できるものはなく,一般にう蝕が発生しやすい部位において虐待群ではさらに高い割合でう蝕を有し,永久歯萌出直後早い段階で罹患していると考えられた.一人平均う歯数のパーセンタイル値では,いずれの年齢区分においても虐待群の25%は対照群と同様にう歯を有していなかった一方で,虐待群の一部の者のう歯数が非常に多く,虐待群の全体的なう蝕歯数の数値を引き上げていると推察された.

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© 2023 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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