日本障害者歯科学会雑誌
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臨床集計
介護老人福祉施設における摂食嚥下障害についての実態調査
―摂食嚥下障害と多剤服用の関連性の検討―
山口 知子石川 健太郎山畑 智也弘中 祥司
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2023 年 44 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

介護老人福祉施設の入所者は複数の疾患を合併しており,摂食嚥下障害を有する率が高いとされている.今回,介護老人福祉施設の入所者における摂食嚥下障害の現状を把握するため,摂食嚥下指導の実態を調査し,多剤服用と摂食嚥下障害の関連性を検討したので報告する.対象は2017年から2020年までに摂食嚥下指導の対象となった241人である.調査項目は,対象者背景(性別,年齢,全身疾患,内服薬剤数),施設からの相談内容,評価時の食形態,摂食嚥下機能評価である.服用薬剤が5剤以下を対照群,6剤以上を多剤群とし,摂食嚥下障害の疑いの有無について比較検討した.最も多い相談内容は,対照群がむせ・嚥下困難,多剤群が食形態の変更であり,多剤群は対照群と比較し,各期において摂食嚥下障害の疑いの割合が有意に高かった.入所者の多くが複数の薬剤を服用しており,むせや嚥下困難などの訴えも多かったにもかかわらず,服薬困難についての相談はなかった.薬剤を内服させる施設職員が,摂食嚥下障害の服薬への影響を十分に認識していない可能性があると考えられ,摂食嚥下障害のある要介護高齢者にとって,服薬困難は潜在的な課題であると推察された.今後は摂食嚥下機能の専門職の視点から他職種に対して問題提起する必要があると考えられた.

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© 2023 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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