日本障害者歯科学会雑誌
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臨床集計
一歯科医院が35年にわたり行ってきた医療的ケア児に対する在宅歯科医療の実態報告
齋藤 知子村内 光一伊藤 美咲森崎 市治郎
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2023 年 44 巻 1 号 p. 39-45

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抄録

1987年から35年間,開業歯科医院が行ってきた在宅医療的ケア児の歯科医療について,疾患・障害別人数,居住地分布,往診・訪問診療依頼件数,初診時年齢,相談内容,呼吸管理と栄養管理の状態などを集計し考察した.往診・訪問診療先は初診時0~18歳の在宅医療的ケア児48人で,その半数以上は当院から半径4km圏内で,最も遠いところでも12km圏内であった.往診・訪問診療件数は2011年以降に著しい増加傾向がみられた.対象児の初診時年齢は1歳児が最多で,次いで2歳と4歳が多く,幼児に対する往診依頼が多かった.疾患/障害別では,脳性麻痺を中心とする低酸素脳症後遺症の小児を中心に病・障害名は27に及ぶ多様性がみられ,また胃瘻や呼吸管理,喉頭分離を行っている例が多かった.往診・訪問診療への要望理由としては,歯並びや咬合,歯の交換障害に関する診察と相談が最も多く,次いで口腔ケア,歯石除去,嚥下機能訓練の順になっており,診療内容は,特別に高度な技術を要するものや侵襲を伴うようなことはなかった.

在宅高齢者を対象とする往診・訪問診療を行っている歯科医院は多いが,在宅医療的ケア児を対象とする歯科医院は少なく,在宅医療的ケア児に対する往診・訪問診療が望まれていると考えられ,さらに在宅医療的ケア児の歯科保健を推進していくためには,保健医療機関,療育・福祉機関や多職種と連携できるネットワークの整備が必須であると考えられる.

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© 2023 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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