日本障害者歯科学会雑誌
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原著
初診時に口腔内診査で拒否行動を示した自閉スペクトラム症者へのトレーニングによる口腔内診査とポリッシングブラシの適応要因
鈴木 香保利小笠原 正増田 裕次
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2023 年 44 巻 2 号 p. 131-142

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抄録

初診時に口腔内診査をスムーズに受け入れることができなかった自閉スペクトラム症者(以下ASD者)に対して行動療法を用いたトレーニングを行い,トレーニング効果の要因について検討した.対象者は2019年4月から2022年12月までに来院した初診のASD者81名とし,そのうち,口腔内診査をスムーズに受け入れられなかった41名をトレーニング対象とした.暦年齢,性別,発達年齢,強度行動障害,障害特性,過去の歯科治療経験,医科治療経験について調査し,「車から出る」から「口腔内診査」「歯科器具」までの13ステップのトレーニングを行い,行動を観察し評価した.Fisherの直接確率計算と決定木分析により分析し,検討した.分析の結果,トレーニングの「完了/未完了」には発達年齢のすべての項目,強度行動障害の総合点数,「奇声」「常同行動」「感覚過敏」「医科抑制経験」が影響していた.言語理解の発達年齢が2歳7.5カ月以上で「常同行動」のない者全員がトレーニングを「完了」することができ,未知の器具への理解と過去の「医科抑制経験」による恐怖心を消去できる可能性が示唆された.決定木分析の結果,ASD者のトレーニングの可否は,発達年齢が最も重要な条件で障害特性が可否に影響していた.ASD者において,口腔内診査やポリッシングができれば定期健診を地域の歯科医院で身体抑制(以下抑制)されることなく受けられ,口腔衛生指導を受け,口腔衛生状態を改善する機会ができる.

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© 2023 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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