日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
中等症大動脈弁狭窄症を有する100歳の超高齢者に対する全身麻酔経験
大野 由夏髙木 沙央理長谷川 彰彦小長谷 光
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2023 年 44 巻 2 号 p. 143-150

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抄録

中等症大動脈弁狭窄症を有する超高齢者の全身麻酔を経験した.

患者は100歳女性,身長132.5cm,体重44.3kg.既往歴に高血圧症があった.失神,胸痛既往,歩行時の息切れはなかった.右側口蓋部に腫瘍を認め全身麻酔下口蓋腫瘍切除術を予定した.心臓超音波検査で重症に近い中等症大動脈弁狭窄症,軽症僧帽弁閉鎖不全症,左室壁運動軽度低下,左室駆出率軽度低下(50%)を認めた.胸部エックス線写真で軽度心拡大,血液検査で脳性ナトリウム利尿ペプチド上昇(63.2pg/ml)を認めた.全身麻酔は静脈路よりミダゾラム1mg,レミフェンタニル塩酸塩0.25µg/kg/min,ドパミン塩酸塩5.9µg/kg/min持続投与,1%デスフルランでマスク導入し就眠した.血圧低下に対しドブタミン塩酸塩5.0µg/kg/minの持続投与を開始したところ頻脈を生じたため投与中止し,ノルアドレナリン0.08µg/kg/minの持続投与を開始した.維持をデスフルランからプロポフォールに変更し術中循環動態を保つことができた.術後経過良好で術3日後に退院した.

平均寿命の延長に伴い高齢者の手術は増加している.高齢者に対する手術適応は年齢,全身状態と合併症,術式などの要素によって決定される.患者の意欲,日常生活動作を重視し,手術適応や術式の妥当性を考慮したうえで全身麻酔を施行し原疾患を治療することは,患者の生活の質向上につながる可能性がある.

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