日本障害者歯科学会雑誌
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症例報告
自閉スペクトラム症児の前歯部交叉咬合を筋機能訓練装置ムーシールド®にて改善した3症例
高井 経之
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2023 年 44 巻 2 号 p. 159-165

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抄録

筋機能訓練装置であるムーシールド®は,既製品として販売されているためそのまますぐに使用が開始でき,印象採得による拒否行動の誘発や装置作製のための時間的ロスもないため,障害児に対しても適用可能な症例があると思われる.今回,前歯部交叉咬合となった自閉スペクトラム症児の3症例について本装置にて被蓋関係の改善を試みたので報告する.

3症例とも発達年齢は3~4歳台で口腔内診査は受け入れる状態であり,極度の口腔周囲の過敏性や悪習癖などもなかった.最初に本装置をTSD法にて見せて,触らせてから口腔内に挿入した.着脱のトレーニングを数回させた後に,1分間口腔内に保持させた状態で口唇閉鎖や鼻呼吸が可能なことを確認してから使用を開始した.

3症例中2症例は就寝時の使用が困難で日中に1~2時間程度の使用にとどまったが,母親の協力により毎日使用を継続し1年程度で被蓋が改善した.もう1症例は使用開始から1週間後には就寝時の使用が可能になったため2カ月で被蓋が改善した.

自閉スペクトラム症児で前歯部交叉咬合がみられた場合には,本装置を第1選択として試みる価値があると思われた.日中に数時間程度でも使用が可能であれば矯正治療への慣らしトレーニングを兼ねて1年程度を目途に使用を継続し,さらに就寝時に使用できた場合には,早期に被蓋改善が見込めることが示唆された.

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© 2023 一般社団法人 日本障害者歯科学会
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