2025 年 46 巻 2 号 p. 132-137
13トリソミー症候群児は重度合併症をもち,経口摂取が困難な場合が多い.今回,口腔感覚の受容が良好であり,摂食機能療法を通して摂食機能の向上が得られた例を経験したので報告する.
症例は初診時1歳1か月女児,離乳が進まないことと唇顎口蓋裂の手術のためHotz床の作製を主訴に近隣歯科診療所から紹介され当科を受診した.唇顎口蓋裂(CLP)・心室中隔欠損症を伴い,粗大運動は未定頸であった.乳児用ミルクを唇顎口蓋裂用の哺乳瓶で摂取し,離乳食は初期食を摂取していた.乳歯は未萌出であり,口腔内の感覚過敏はみられず,口腔感覚の受容は良好であった.新製したHotz床の受容も良好であった.離乳食摂取時は舌突出が認められ,食塊移送は困難であった.成人嚥下獲得不全と診断し,乳児用ミルクと初期食を継続し,1食あたりの離乳食の増加を治療方針とした.1歳10か月で口唇形成,軟口蓋形成,舌小帯切除の手術を行った.Hotz床の使用は終了した.2歳時,顎介助による水分摂取訓練を指導した.3歳時,離乳食の摂取量が増加した.成人嚥下獲得は不十分であるが,動きの弱い押しつぶし動作やすりつぶし動作が認められた.
初診時から口腔感覚の受容が良好であり,歯科介入により,経口摂取の維持,離乳食の増加などの摂食機能の向上が得られた.経口摂取が進みにくい疾患において,より早期の歯科介入は,口腔感覚の受容と摂食機能の向上を促すことが可能であると考えられた.