2025 年 46 巻 2 号 p. 138-144
全身性アミロイドーシスはβ構造をもつ特異な線維性タンパク質を主成分とするアミロイド物質が全身諸臓器の細胞外に異常沈着し,機能障害を惹起する難治性疾患である.今回,嚥下困難を契機に発見された全身性アミロイドーシスの症例を経験したので報告する.症例は79歳男性.数年前から嚥下困難感があり,耳鼻咽喉科での診察では異常所見なく経過観察となっていた.20XX年1月に嚥下困難の増悪から消化器内科へ入院した.嚥下障害および巨舌の精査目的で当科へ依頼があり,舌組織生検の結果からアミロイドーシスを疑い,全身検索を依頼した.全身検索の結果,骨髄組織生検や皮膚組織生検でもアミロイドタンパクの沈着が認められたため,全身性アミロイドーシスとの確定診断にいたった.病状,年齢から根治療法の適応ではなく,患者と相談のうえベスト・サポーティブ・ケアの方針となった.当科では,間接訓練および誤嚥性肺炎予防のための専門的口腔ケアを行い,わずかではあるが嚥下機能の改善が認められ,嚥下調整食0~3レベルの食材の経口摂取が可能となった.本症例のように非腫瘍性の巨舌,嚥下困難を呈した症例において,鑑別疾患としてアミロイドーシスを念頭におき診療を行う必要があり,舌を診る機会が多い歯科が早期発見できれば,より有効な治療につながる可能性がある.また,終末期の患者に対し,われわれの介入によって可能なかぎりQOLを高めることができたと考えられた.