2010 年 51 巻 3 号 p. 112-121
北海道幌延地域のボーリングコア試料(珪藻質泥岩, 硬質頁岩)を用いて, 水-岩石反応実験を行った. その結果, アルカリ性溶液(初期pH=9), 酸性溶液(初期pH=5)ともに初期に急激に中性化し, その後は徐々にpHが減少していった. このpHの減少は, 黄鉄鉱の酸化反応による. この反応式より求まる硫酸イオン濃度とH+イオン濃度の比は, 実験のこれらの分析値の比と異なり, かなり低かった. このことは, 生成するH+の大部分が消費されることを示す. この相異は, H+イオンと陽イオン(アルカリ土類金属イオン)とのイオン交換反応, ケイ酸塩鉱物(長石)の溶解反応によるH+イオンの消費によって説明される. すなわち, 本実験試料は, 黄鉄鉱の酸化反応により発生したH+イオンのほとんどを消費する強い緩衝作用をもっているといえる.