2012 年 53 巻 2 号 p. 80-88
わが国の沿岸域の地下には軟質な地層が広く分布し,それらを対象とした調査掘削には課題が多い.深度200mを超える大深度の調査掘削では,作業能率の高いワイヤーライン工法が一般に採用される.しかし,ワイヤーライン工法は,掘削径とツールスとの間隔が普通工法よりも狭いため,掘進時に送水圧を過剰に上昇させ,軟質な地層のコア採取率の低下を招く可能性がある.そこで,われわれは,標準仕様より掘削径を大きくしたワイヤーライン掘削ツールス,および速やかな孔底崩壊物の除去や確実なコア採取のためワイヤーライン式シングルコアチューブを開発した.開発したツールスを使用した掘削の結果,送水圧の過剰な上昇は認められず,大きな孔内事故もなく作業能率を維持し,良質かつ高いコア採取率が実現できた.